離島における認知症支援体制構築の方法を明らかにするために,東京都島嶼部9町村(大島,八丈島,三宅島,新島,母島,父島,利島,神津島,青ヶ島,御蔵島)を訪問し,各島の地理,人口,生活状況,認知症関連資源等の情報を整理するとともに,「認知症支援の課題」と「課題解決の方法」をテーマとするフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)を実施した.FGDにおける討議内容は録音して文章に起こし,内容の質的分析を行い,課題と解決策に関するマニュアルを作成した.各島の状況はそれぞれ異なるが,課題は以下の5つの大分類にカテゴリー化された.(1)認知症に対する偏見・理解不足(認知症になると島では暮らせない,介護は家族がするのが当然,認知症を隠す),(2)医療サービスの質や量の課題(評価・診断・治療が難しい,入院に対応できる看護職員の不足,医師が不足しているので往診は難しい,職員の移動が多いので継続性が確保できない),(3)健康づくり・介護に関する知識不足(生活習慣病対策の遅れ,介護に関する知識不足),(4)介護保険サービスの不足(介護人材の不足,入所施設の不足,介護保険料の限界),(5)介護保険外サービスの不足(生活支援サービスの不足).三宅島ではFGDによる課題の明確化を起点にして,認知症の人の診療待ち時間の短縮,社協の通院送迎バスと買物支援,各集落でのサロン,家族介護者向けカフェ,月1回の医療連携ケア会議の開催,テレビ電話と訪問による見守り事業がはじまり,小笠原では年2回の地域ケア会議の開催,認知症初期集中支援チームへの設置が進められた.各島の認知症と共に暮らせる地域づくりに向けた動きを記述し,内地のスタッフの訪問による研修会,FGD,事例検討を起点に,離島における認知症支援体制構築およびDementia Friendly Communitiesに向けたモデルを提案した.
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