研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は,愛着(アタッチメント)の内的作業モデルを厳密に測定することである。この種の研究は,世界でも数例しかない。そして先行研究にはいくつか問題点があり,こうした先行研究の問題を克服する試みを行った。 本研究の最大の意義は,一旦作られた愛着の内的作業モデルは,多くの場合に無意識かつ自動的に働く(坂上,2005)を実証的に確認することである。なぜならば,現在使われている愛着のIWMを測定の多くは,質問紙調査などの顕在的な指標を使用しており,本来無意識的な要素が多くあるはずの愛着の内的作業モデルを測定できているとは言い難い。ゆえに,潜在的態度を測定するGNAT(Go/No-go Association Test)を利用して内的作業モデルの潜在的,自動的処理部分を測定した。それに対して,従来用いられてきた質問紙による,内的作業モデルの顕在的,意識的処理の部分との比較を行った。そして,内的作業モデルの潜在的部分と顕在的部分が,異なる情報処理を促進することを明らかにした。 具体的には,以下の研究を実施した。1 愛着に関連する語を集め,GNATで使用する単語を選択した。2 研究1と同様の手法で研究3で使用するポジティブ語・ネガティブ語を選択した。3 愛着からの影響が仮定されるポジティブ語・ネガティブ語へのGNATで測定する潜在的愛着(以下,潜在的IWM)の影響を調べた。実験参加者にGNATを実施し,次にポジティブ語・ネガティブ語を使った語彙判断課題を実施した。4 「愛着に関する」ポジティブ語・ネガティブ語を収集し,選択した。5 「質問紙で測定するIWM(以下,顕在的IWM)と潜在的IWMの影響する情報処理が異なることを検証した。その際に,研究4で選択した「愛着に関連する」ポジティブ語・ネガティブ語を使って,語彙判断課題を実施した。
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