研究実績の概要 |
世間では,近年,青色灯の設置が増え,青色が競技や学習成績のパフォーマンスを高めるとの言説がしばしば聞かれる.しかし,青色という色彩が人間の行動に与える効果を明確に示した報告はない.このため本研究では,主に,青色照明および青色を用いた環境が,他の色彩環境かと比べて人の心理や行動に特別な効果を持つか否かを比較検討することを目的としている。H26年度は,まず,色彩が人の心理的行動に異なる影響を示すことを報告した先行研究の一つであるMehta & Zhu (2009)の研究の追試を行なった。 《方法》【装置・色彩環境・刺激】 暗幕で区切られた実験室内にマルチカラーLEDシーリングライト(TOSHIBA, LEDH82718X-LC)によって室内照明を施した。照明には3つの色彩条件を用いた。机上での照度は赤色61 Lx,x-.52,y=.32,青色44 Lx, x=.90,y=.13, そして白色20 Lx, x=.28, y=.32であった。心理行動成績を調べるための課題/問題はPC(SOTEC, )上のソフトウエアE-prime2.0によって制御され,CRTモニター(DELL, )に呈示された。【手続き】参加者は実験室内でモニターの80cm前に楽な姿勢で座った。参加者は呈示される課題に対して,求められたテンキーを押すか解答用紙にペンで解答した。課題には1.記憶課題,2.文字判断課題,3.気分評価課題,4.想像課題,5.熟慮性-衝動性尺度課題(質問紙尺度)を実施した。【参加者】正常色覚を持つ60名の学生が参加した。20人ずつ照明3条件に無作為に振り分けられた。 《結果》文字判断課題において,赤色条件の判断反応時間が青色条件より短い傾向が見られた。また想像課題において赤色条件での反応時間は白色条件よりも有意に早かった。しかし,その他の課題における成績に有意差は見られなかった。
|