研究実績の概要 |
本研究は,金融リスク認知が投資行動に影響する心理過程を解明し,投資マインドを心理学的に解明するものである。平成26年度および平成27年度調査では,30代~60代の社会人合わせて2900名を対象とするモニターリサーチを行った。まずはじめに金融行動尺度が開発された(佐々木・大久保・中林,投稿中)。この尺度は,金融リスク認知尺度,個人的・社会的考慮要因尺度,投資態度尺度の3つの下位尺度で構成されており,これらの尺度の併存的妥当性と構造的妥当性が確認された。金融専門家と一般消費者の2群の多母集団分析も行われ,配置不変性・測定不変性が妥当であることが確認された(佐々木・中林・瀧川,2015)。平成28年度の調査では,上述のように平成26年度・27年度に妥当性が確認された金融行動尺度と,他の金融に関連する尺度との比較・検討が行われた。Slovic(1987)の一般的リスク認知尺度,DOSPERT(Weber, 2000),投資・貯蓄意識(大竹・伊東),金融意識(長田・長田・本橋・守口,2002),金融リスク認知(原田,2003)が比較検討された。調査の対象者は,30代~60代の社会人1000名であった。重回帰分析を用いて,これらの金融に関する尺度と金融行動尺度(佐々木・大久保・中林,投稿中)が,金融商品の購買意欲に与える影響を検討した。その結果,金融行動尺度の下位尺度の投資態度尺度が,特に有意な影響を示していた。詳細結果については現在投稿準備中である。更に,投資態度が金融リスク下の意思決定に与える影響を解明するため,投資態度尺度とフレーミング課題を用いた実験を行った。ロジスティック回帰分析を行った結果,投資態度の中の安全性・確実性志向がポジティブ・フレームにおけるリスク回避を強めることが明らかになった。結果の詳細は日本心理学会第81回大会で報告する予定である(佐々木・瀧川,2017)。
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