研究課題/領域番号 |
26590135
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
河野 和明 東海学園大学, 人文学部, 教授 (30271381)
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研究分担者 |
羽成 隆司 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (40269668)
伊藤 君男 東海学園大学, 人文学部, 准教授 (70529627)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 対人嫌悪 / 相互利他性 / 利他行動 / 対人認知 / 対人方略 / サイコパシー傾向 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず計画通り、学会参加および文献研究を行って対人嫌悪に関する情報収集を行った。その成果の一部は訳書として出版された。その一方で、研究全体にとって相対的な重要度の高い調査を優先して実施することとし、調査研究の実施順序を変更した。すなわち、本年度は第3課題である“対人嫌悪の結果としての社会的変化”に関する検討を行った。特に、他者から嫌われることを避ける傾向(被嫌悪回避)を測定することによって、対人関係における嫌悪感の機能を検討することに主眼を置いた2種の質問紙調査を実施した。 調査1では、被嫌悪回避、嫌悪対象者について嫌悪する理由と対象者への対処行動および対象者への援助傾向を測定し、これらの関連を定量的に検討した。その結果、対人嫌悪が対象者への援助傾向を抑制すること、被嫌悪回避は他者に対する高い援助傾向と関連すること、被嫌悪回避傾向は対象者に対する恐怖感情と相関があるものの、対象者の特徴やほとんどの対処と関連がないことが明らかになるとともに、嫌悪理由に応じた対処方略の特徴が示された。この成果の一部は学会発表および論文として発表された。 調査2では付加的に、相互利他性に反する存在と考えられるサイコパシー(PP)傾向者の対人嫌悪の実態および被嫌悪回避との関連を検討した。その結果、PP傾向者は見かけ上の好悪関係や社会的資源の概要において平均的な人々と差がない一方、一次性PP(冷酷さなど)の高さは女性において、嫌いな同性の数、被嫌悪回避傾向の少なさなどと相関がみられた。二次性PP(衝動性など)の高さは男性において、異性から嫌われている認知、相談できる家族親戚の少なさと相関があった。被嫌悪回避傾向の高さは男女とも二次性PPと有意な相関があった。この成果の一部は学会発表として発表された。 このように本年度は、対人嫌悪およびそのメタ認知を中心に検討し、一定の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した3年計画中、調査の実施順を変更することとなったが、文献渉猟(翻訳書出版)、調査の実施(2種の調査を実施済み)、論文執筆(1本)、学会発表(2件)をそれぞれ順調に実施することができた。遂行量としては、1年間で3年計画全体の3分の1程度の進捗が達成できたものと評価できる。したがって、本研究はおおむね順調に進展しているものと総括できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、対人嫌悪と社会的資源の配分の関係を部分的に検討する調査を実施し、結果をある程度整理できた。今後はまず、3年計画のうちの残された具体的調査を実施していく。すなわち、第1課題「嫌悪感の因子分析的研究」として、大学生および社会人を対象に回答者が嫌悪を感じる人物について評定をもとめる調査を実施する。その後、結果を因子分析することによって、対人嫌悪の背景的因子を析出する。第2課題「嫌悪感の内的処理に関する認知的研究」については、嫌悪対象者について、心的反芻および認知の歪みがどのように生じているかを主として検討する調査を実施する。これによって、対人嫌悪の内的処理の特徴を明らかにする。 本研究の最終的な目的は、対人嫌悪状況の内容、そこで生じる嫌悪者側の認知的変化、嫌悪に関するメタ認知、結果として生じると考えられる社会関係の変化をモデル化し、社会関係調整において対人嫌悪がどのような機能を果たしているかを示すことである。そのためには、上記の検討および平成26年度実施の調査結果に加えて、さらに社会的資源の配分や利他行動を測定する調査を補強し、総合モデルの構築に挑むことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は主として以下による。(1)予定していた一部の学会参加が校務等の都合上不可能になったことによって、旅費の使用額が減じたこと。(2)支給額の減額によって、全体費用のバランスから、購入を見送った物品があり、物品費が減じたこと。(3)同じく、支給額の減額により、全体費用のバランスを考慮た結果、利用しなかった謝金額があったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
残金について、今年度以降は、データ解析に関連する消耗品類、ソフトウエア類等の購入に充てる計画である。また、調査研究が累積するため、データ入力等の謝金必要額の増大が見込まれる。さらに、今年度および次年度は国際学会への参加と発表を計画しており、渡航費が必要となる。これについては、計画段階から貨幣レートが変動したこと等によって旅費が増大する可能性がある。以上の点を考慮に入れると本研究費の経費が必要と見込まれる。
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