研究課題/領域番号 |
26590138
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤本 学 立命館大学, 教育開発推進機構, 准教授 (00461468)
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研究分担者 |
古賀 弥生 活水女子大学, 文学部, 教授 (00585101)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホームレス / フォーラムシアター / スキルトレーニング / 社会適応スキル / 自閉症スペクトラム / 応用演劇 |
研究実績の概要 |
はじめに、スキルトレーニングについては、2014年度の後半から2015年度の前半までの第1期は4回構成で行った。しかしながら、参加者の出席率が芳しくなかったため、内容の精選と参加者の負担軽減を図った。そして、2015年度後半の第2期は2回構成で行った。その結果、参加者の参加率と満足感が向上した。第1期と第2期の全9回のトレーニングから得た知見を元に、2016年度の第3期に向けて、現在プログラムの改定を図っている。 つぎに、質問紙調査については、以下の3つ研究を行い、学会および研究会で発表した。1つ目は、実社会に適応するために必要なスキルの特定と、それらを測定する尺度「SWITCH」の開発である。この発表は、発表した大会の優秀発表賞を受賞した。 2つ目は、発達障害傾向(自閉症スペクトラム傾向)に対する精神科の診断を仰ぐ必要がある人を特定するための1次スクリーニングテストの開発である。このテストは、現在我々が研究活動をしている就労自立支援センターにおいてすでに実施されており、センター長から高い評価を受けている。このテストは日本心理学会において公表された。3つ目は、フォーラムシアターによるスキルトレーニングの効果性の検証である。この検証によって、フォーラムシアターは、社会適応の難しいホームレスのスキルを改善するというリメディアル効果を持っていることが明らかになっている。この知見のプロトタイプは研究発表会で公表された。 さいごに、インタビューについては、ホームレスに対するフォーラムシアターが、従来演劇の特性と言われていた「共同性」、「客観性」、「虚構性」に加えて、「俯瞰性」、「遊戯性」という2つの特徴を持つことを明らかにした。この知見は、アートマネージメントと文化経済学共催の研究発表会において公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トレーニングは当初の予定通りに進行し、来期に向けたプログラムの改善に向けて十分な知見を得ている。また、現在のプロトタイプのトレーニングプログラムでも、ホームレスの個人特性を踏まえることで、従来効果の見えづらいスキルトレーニングの効果を可視化することに成功している。そのため、改善されたプログラムは、より一層の効果を挙げることができると期待される。 さらに、研究遂行の過程で必要になった社会適応スキルや、就労自立支援センターから要望のあった自閉症スペクトラム傾向の1次スクリーニングテストの開発など、当初予定していなかった尺度やテストを開発し、それらが一定以上の成果を挙げている。 インタビューの検討においても、これまで明らかでなかったフォーラムシアターが持つ利点を特定することに成功している。これは、フォーラムシアターによるホームレスのスキルトレーニングという本計画が、新奇なだけでなく十分な効果性を持つアプローチであることを示すものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は順調に進んでおり、現時点で変更の予定はない。 2016年度は、これまでのトレーニングで得た知見を元にトレーニングプログラムの改善を図り、6月から2か月に1回のペースで新プログラムによるホームレスの社会適応スキルトレーニングを実施していく。 質問紙調査およびインタビューの結果については、精力的に分析を進め、学会などで発表していく。さらに、2015年度に学会で発表した諸知見についても、順次論文化を図っていく。 並行して、得られた知見を(1)ホームレスの支援および置かれている状況、(2)ホームレスに限らない実社会に適応するために重要なこと、(3)フォーラムシアターの概要とそれを用いたトレーニングの方法および効果性、の3点に集約し、実用的な書籍を出版することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
十分な参加者を確保するために、ホームレスに対するスキルトレーニングを1季(3か月)ごとに実施している。 3年目でも4回実施する予算を確保するために、2年目の予算を計画的に3年目に回した結果、次年度使用額が発生することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は、計画通り4季分のスキルトレーニングの実施費用に充てる。
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