研究代表者の異動(2015年4月)に伴い、本研究は、当初計画より1年遅れた2016年度に完了した。2016年度は、重複障害児の心理アセスメントに用いる行動観察マニュアル(研究Ⅰの成果:2014年度完了)の有効性を明らかにするため、日韓の大学生のデータと熟練教師のデータを比較検討した。その結果、大学生のうちマニュアル活用群のデータが熟練教師のデータと共通する点が多くみられ、非活用群よりも、重複障害児のニーズをよく把握していることが推察された。文字数の関係上、ここでマニュアルの詳細を紹介することはできないが、①自立活動の6区分を念頭に置いた上で行動観察を実施すること、②子どもをみる視点を固定した上で視野を広げるようにすること、などは特に有効であることが明らかになった。 研究成果は、まず日本、中国、韓国の国際会議で発表した。例えば、2016 International Forum on Education for Children with Autism(2016年11月,中国)においては、教育工学的アプローチを用いた重複障害児の行動観察研究の必要性と可能性について説明した。また、The 9th Chang-Pha International Symposium(2016年5月,韓国)においては、重複障害児の指導及び支援における行動観察の重要性を強調し、マニュアルの一般化、すなわちベトナムをはじめとする途上国への適用可能性についても提案した。今後、本研究の成果である行動観察マニュアルが、特別支援教育に携わる教師の養成と研修に活用できるよう、モデル事業や研究を継続的に推進していきたい。また、本研究が契機となり構築された日韓の研究者ネットワークを発展させ、世界の特別支援教育及び障害児の臨床・実践に貢献したい。
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