研究課題
本研究では、自閉症スペクトラム(ASD)児・者の発達における社会的環境の役割について検討するため、日英間の比較文化研究を行っている。H26年度は日本のASD児・定型発達(TD)児を対象として、眼球運動計測装置を用いて(1)風景や建築物を見ている際、(2)他者の顔を見ている際の注視パターンを記録し、解析を行った。(1)日本を含む東アジア文化圏のTD成人は、写真などを見るとき背景に注目する傾向があるが、西欧・北米文化圏のTD成人は、写真の中心に写っているモノに注目する傾向がある。実験の結果、日本のASD児とTD児では、画像の中心に写っているモノより背景を長く見る傾向がみられた。これは、東アジア圏のTD成人を対象とした先行研究と同じ傾向であり、ASD児もTD児と同じように、注意の向け方が育った環境(文化)の影響を受けている可能性が示唆された。(2)他者の顔への注視パターンも、日英によって異なることが研究代表者らの実験心理学的な研究から明らかになっている。実験の結果、ASD児はTD児にくらべて、動画の人物の目の領域を見る時間が短い傾向がみられた。ただし、全体的にASD児も目の領域を見ている割合が目以外の顔のパーツを見ている割合より長く、ASD児・TD児ともに日本のTD成人と同様の傾向だった。今後は、次年度に収集するイギリスのASD児とTD児のデータと比較することにより、文化の影響を検討し、ASD児者の認知発達における可塑性について定量的な知見が得られることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度に、東京の自閉症スペクトラム児・定型発達児のデータを収集することができ、次年度にロンドンでも同一の実験を実施して、研究成果をまとめることができるため。
平成26年度に東京で実施した実験をロンドンで実施し、両国のデータをもとに論文としてまとめる。
本研究課題は2年計画で、残り1年間も継続して実験を行うため。また、国際学会等での発表は、日英両国のデータを取得した後に行うため。
継続して行う実験の、実験参加者への謝金や実験に関わる物品費などに使用する予定である。また、国際/国内学会等での発表のため、当該助成金の一部を旅費にあてる予定である。
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Autism Research
巻: 7 ページ: 590-597
10.1002/aur.1397