研究課題/領域番号 |
26590142
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
高濱 裕子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10248734)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 世代性 / 三世代 / 社会的資源 / 感情 |
研究実績の概要 |
平成24年度に実施された思春期の孫を持つ祖父母世代への調査協力者のうち、面接に協力可能と回答した祖父母20名を対象に、面接調査を実施した。とはいえ、実際に面接調査を実施する際、高齢者が多いため現時点での体調を考慮する必要があった。そのため、今年度協力を得られたのは10名であった。面接データは専門業者に委託して全て文字転記され、その文字転記記録に基づいた分析が行われた。 既に実施された質問紙調査と面接調査の結果を包含した分析から、次の結果が見出された。祖父母世代と親世代との間で授受される資源(経済的、道具的、精神的)の認識は、2世代間で必ずしも一致しなかった。しかし不一致は否定的な意味合いをもたず、不一致であっても双方の世代の満足度は高かった。また、この年代の祖父母の子ども時代は、第二次世界大戦という時代背景(文化的要因)の影響を大きく受けていた。各個人の親世代におけるテーマが、統合されつつ祖父母世代のテーマへと遷移する様相が析出された。彼らの喪失体験は、次世代への価値(精神的、物質的)の引継ぎに反映されていた。 また、今年度は中学生である孫のデータをも分析に組み込み、文字通り三世代データの分析に着手して成果を発表した。 なお、面接データの一部を含む研究成果は次のように発表された。日本発達心理学会第26回大会(東京大学本郷キャンパス)において、自主シンポジウム1件(生涯発達と世代性)、ポスター発表2件(歩行開始期及び思春期の子ども・親・祖父母の世代性(9)、歩行開始期及び思春期の子ども・親・祖父母の世代性(10))を行い、英国心理学会年次総会(開催地はバーミンガム)においてポスター発表1件(Comparison of the nature of generativity between parents and grandparents)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象者の事情(体調や仕事の都合)により、全ての対象者に面接を実施することができなかった。そのため、「おおむね」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施することができなかった思春期の孫をもつ祖父母への面接調査を実施する。また予定している歩行開始期の孫を持つ祖父母への面接調査を実施する。 思春期の孫を持つ祖父母世代の語りからは、戦争などの時代背景が浮き彫りになった。歩行開始期の孫を持つ祖父母世代と比較することによって、時代背景や社会の変化などが際立つのではないかと予想される。祖父母性の語りの共通点と相違点を析出することが重要なポイントとなるだろう。 研究最終年度になるので、祖父母、親、孫の三世代のデータを組み込んだ分析を行い、新たな知見を公表することも課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2点ある。 第一に、対象者の都合により調査を予定した対象者全員に調査ができなかった。そのため、家庭訪問や面接のための要員の確保人数が予定より少なかったことである。それに連動して、対象者の面接記録を文字化するための予算も、予定より少なくなった。 第二に、連携研究者のうち1名の学会出張旅費を、本会計から支出しなかったことによる。研究者の都合により、所属大学の研究費から支出したことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、家庭訪問による面接調査をさらに進めること、そして既に2015年英国心理学会において研究発表が採択されたので、その渡英費用に宛てる予定である。
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