研究課題
本研究では、小説などの物語を用いて自閉スペクトラム症(ASD)をもつ成人および児童における日常生活スキルプログラムを開発することである。従来の支援プログラムは、心の理論や感情理解など、特定の領域のみを対象とした局所的なプログラムであったといえる。今回提案するプログラムは、小説や評論文の読解方略の教育を通じて行う日常生活スキル向上のための包括的なプログラムである。小説の読解力には、記憶力、想像力、裏の意味を探る力が必要であり(田村, 1986)、小説読解の方略を学習することで、他者の意図理解や心情理解の能力が向上する可能性がある。本研究では、ASD傾向の高い大学生とASD傾向の低い大学生を対象として、小説を用いた短期間集中の介入を行うことで、他者理解能力の向上を目的としたトレーニング法を開発することが目的であった。自閉症スペクトラム質問紙 (AQ)によって、実験参加者の「社会的スキル」、「注意の切り替え」、「細部への注意」、「コミュニケーション」、「想像力」を評価した。紙面上で、AQ、対人応答性尺度第2版(SRS-2)、現代文の評論文と小説文に解答した。PC上で、言語を用いた心の理論課題(Strange story課題, White et al., 2011)、図形を用いた心の理論課題(Castelli et al., 2000)に回答をした。その結果、プログラムの実施前後でパフォーマンスを比較した結果、図形の動きに対して心的状態を帰属する傾向が高くなることがわかった。つまり、言語を用いたトレーニングによって、非言語性の心の理論課題に教育効果が転移し、成績の向上が認められた。今後は、この成果を国際学会で発表し論文として発表する予定である。
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NeuroImage
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