本研究は、認知課題遂行中に自動的に駆動される自動的エラーモニタリングのプロセスを取り出すために行われた。具体的には、[2+6=7 8]のような刺激を提示し、左端の数字「2」と答え「7」を加えると右端の数字「8」と等しいかどうかを判断することが求めらた。ここでの課題要求は、「2+7」が「8」と等しいかどうかを判断することであるが、もし我々が2+6=7という足し算の間違いを自動的に検出できるとしたら、課題に要する時間に遅延が生じるだろうという仮説を立て、この仮説を実験的に検討した。昨年度の実験では、予想したように、誤った計算式を含む場合に反応の遅延が生じた。本年度は、その結果を追試するための再実験を行った。大学生33名を対象として実験を行った結果、繰り上がりのある計算において、正しい計算式を含む場合に謝った計算式を含む場合よりも反応時間が遅くなることが明らかになった。 H27年度に行った先行実験では、謝った式を含む場合に反応に遅延が生じるという結果であるのに対して、H28年度に行った本実験では、正しい式を含む場合に遅延が生じるという逆の結果となっている。また、反応の遅延が生じるのは、先行実験では繰り上がりがなく容易な計算課題である場合なのに、本実験では繰り上がりがある困難な課題の場合であるという点でも結果に不一致が生じている。これらの結果の不一致は、何を原因としているのかは本研究からは明らかにならず、今後さらに検討を進めて行く必要がある。
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