軽度の発達の遅れ(DQ=85)を伴う自閉スペクトラム症の男児(平成30年3月31日時点で9歳5か月)を対象に2014~2017年度にわたり、数カ月に1回程度(約30分)自然観察を行い、ウェアラブルビデオカメラで記録した。また、随時、発言をノートに記録した。 2014~2016年度にかけて言語能力および認知能力の伸びがみられたことにより、2017年度は特別支援級に関してそれまで在籍していた知的障害学級からじょちょ障害学級へ移籍した。それに伴い、2017年度は交流学級(通常学級)で受ける授業が増えた。他の子どもとのコミュニケーションの改善や集団行動への適応がみられる一方で、新奇場面や新しい授業内容においては補助が必要である。 コミュニケーションにおいては他者の心情理解、自身の心情描写もかなり的確になってきている。一方、家族や特別支援級の担任など身近な人以外には自身の気持ちや要求をはっきり伝えることは難しい。また、文章の読み書きがかなりできるようになってきた。そのことにより、昨年まではマンガを読む際に特定の場面にこだわり、その場面を他者に伝えようとしたり、読むように強要したりすることが多かったが、2017年度途中からはある程度まとまりをもったストーリーとして説明をすることが増えてきた。 上記のような能力の拡大に伴い、コミュニケーションや複数人での遊びにおいては、時間的前後関係のある陳述や見通しを持ったプランを述べるといった場面がみられる。一方で、対象児が独りで遊んでいる際には、幼児期より継続しているアニメやキャラクターになりきってのごっこ遊びが減少することなく続いている。ただし、そこでもおもちゃやぬいぐるみを敵キャラクターや仲間にみたてているような様相が増えてきているのは特筆すべきであろう。
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