平成29年度においては、研究協力の得られた2カ所高齢者介護施設介護職員を対象に、以下に示す調査、介入及び結果の処理を行った。A施設介護職員(指導群15名)とB施設介護職員(対象群15名)に対し、事前評価として「質問紙を用いた自記式回答法による介護に関する15項目の意識調査(10件法)」と「模擬患者に対する介助評価(移乗介助および脱衣介助)」を施行した。その結果、意識調査に関しては、指導群得点と対象群得点間に有意差は認められなかった。また、介助評価(移乗及び脱衣における適切介助率)においても、両群間に有意差は認められなかった。 その後、指導群15名に対し、研究者らが作成した「行動分析学の枠組みを用いた移乗介助プログラム」を、e-learningにより学習してもらい、事前評価と同様の評価内容での事後評価を行った(事前評価から約2ヶ月後)。なお、対象群15名に対しては介入は行わず、指導群と同様の評価を施行した。その結果、指導群においては「介護職へのやりがい」、「職業意欲」に関する意識調査項目平均得点の優位な増加が認められ、移乗介助における適切介助率も優位に増加した。また、e-learningプログラムには脱衣介助に関する指導内容は挿入されていなかったにもかかわらず、その適切介助率も優位に増加していた。一方、対象群では、すべての評価項目において優位な差は認められなかった。 その約2ヶ月後における指導群15名に対する事前評価と同様の評価内容でのフォローアップ調査では、事前評価時及び事後評価時と比較し、すべての意識調査項目平均得点において優位な変化は認められなかった。また、移乗介助および脱衣介助における適切介助率においては、事後評価時より優位に減少していた。なお、対象群15名においては、事前評価時及び事後評価時と比較し、すべての評価項目で優位な差は認められなかった。
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