研究課題/領域番号 |
26590156
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
安野 舞子 横浜国立大学, 大学教育総合センター, 講師 (20507793)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学生支援 / 大学生 / メンタルヘルスケア / 動物介在プログラム |
研究実績の概要 |
本研究では、近年つとに増えているメンタルヘルス上の問題を抱える大学生に対し、心理的介入法の一つである動物介在療法/活動を実施し、その効果検証を行う。その検証結果をもとに、学生支援の一環として、大学生のメンタルヘルスケアに有効な動物介在プログラムを開発することが本研究の目的である。また、本研究では、介在させる動物として「動物愛護センター等に保護された猫」を採用することにしているが、それには、日本で年間十数万頭の猫が殺処分されているという現実が関係している。動物愛護センター等に収容され、譲渡先が見つからなければ殺処分の道しか残されていない猫たちを適正に育て、セラピーキャットとして新たな生の道を歩ませることの可能性も本研究では追及していく。動物を命あるものとして愛しむ精神の醸成は教育によってなされるのであり、高等教育機関でメンタル面の向上を必要とする人間(学生)と動物が接することの出来るプログラムが存在するということは、畢竟、人と動物両方の命を救うことになるのではないかと考える。
この目的遂行のために、研究初年度となる平成26年度は、動物介在療法/活動に関する最新の知識を得、プログラム実施に必要な技術を修得するために、文献調査や動物介在介入(動物介在療法/活動/教育の総称)に関するセミナーや研修会に参加した。また、国内で保護猫を採用して動物介在活動/教育を行っている神奈川県動物保護センターを訪問し、聞き取り調査を行った。
これらの調査で明らかになったことは、動物行動学や動物心理学の観点からしても、猫をセラピーキャットとして「育てる」という考え方は適切ではなく、セラピーキャットとしての「適性を見極める」ということが非常に重要だということである。申請者は、横浜市動物愛護センターに収容された猫の中から適性があると思しき1頭を譲り受け、次年度の動物介在プログラムの試行に向けて準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学生のメンタルヘルスケアに有効な動物介在プログラムを検討し試行するために、文献調査や訪問調査を行い、動物介在介入に関するセミナーや研修会に参加して準備を進めた。また、プログラムで介在する猫として、横浜市動物愛護センターに収容された猫を譲り受けると共に、研究実施場所となる申請者の研究室を学生相談室風にアレンジし、次年度からのプログラム試行に備えた。なお、訪問調査については、当初、米国の動物保護団体を訪問する計画であったが、交渉が上手く進まなかったこともあり渡米できなかった。しかし、動物介在介入を研究する国内外の専門家複数名に尋ねたところ、米国内で猫を介在動物として活動している具体的な団体は思い浮かばないと言われたこと、また、米国と日本とでは行政等の保護施設に収容される猫の性質が異なるので参考にするのは難しいのではないか、との指摘を受けたこともあり、米国の団体への訪問調査が実施できなかったことは研究を進めるにあたり大きな問題とはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
大学生を対象とした動物介在プログラムを申請者の研究室にて試行する。当初の研究計画では、米国の動物保護団体を訪問調査する予定であったが、初年度に研究を進める中でその必要性はないことが判明した。一方、初年度に行った文献調査の中で、米国の複数の大学では、試験期間にストレスが溜まる学生に対し、少しでも癒しの場を提供する目的で、図書館の一角等を利用して犬と学生が触れ合う「ドッグ・セラピー」の場を設けていることが分かった。猫を採用した触れ合い活動も、少ないながら実施されているようである。そこで、交渉の段階で有益と判断できれば、現地の大学を訪問し聞き取り調査を実施する。また、当初の研究計画では、猫が介在動物としてどれだけ効果があるのかを検証するために、比較対照グループとしてセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」を用いてプログラムを実施することにしていたが、文献調査の結果、アザラシ型ロボットは、大学生の認知レベルからして実験対象として使用することは適切ではないと判断した。よって、そもそも、大学生のメンタルヘルスケアのための動物介在プログラムは少なくとも国内では皆無であることに鑑み、効果検証については、先ずはプログラム実施前後に行う質問紙および心理テストの結果比較のみで実施することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していた米国への訪問調査を実施しなかったため、その旅費分が繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
この旅費については、いわゆる「アニマルセラピー」を実施する米国の大学で聞き取り調査を行うのに有益な訪問先が見つかれば、次年度に旅費として使用する。
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