最終年度は、本研究の目的である「大学生のメンタルヘルスケアに有効な動物介在プログラムの開発」が実効性あるものとして完遂できるよう、最終的な情報収集とプログラム試行を実施した。情報収集については、動物保護施設と連携し、施設から譲渡された犬を大学キャンパスに派遣しアニマル・セラピーを行っているハワイ大学オアフ校を訪問し、聞き取り調査を行った。その連携施設であるハワイアン・ヒュメイン・ソサイエティも訪問し、セラピー・プログラムのノウハウも尋ねた。また、これまでの調査で、猫を介在動物にするには犬よりもハードルが高いことが分かった為、国内外の動物のスペシャリスト(獣医師、アニマル・コミュニケーター)にインタビューを行い、個体の適性の見極め方、人との適切な関わり方等を学んだ。これら調査から得られた知見を踏まえ、研究者の所属する大学の図書館で「キャット・セラピー」と称し、最終年度中に計4回のプログラムを試行した。1回当たりの参加者は延べ人数で100名前後と大盛況で、「癒されました!これでテスト勉強も頑張れる!」「レポートの疲れも吹っ飛ぶ」「日々の生活の疲れが癒されました」といった、学業への意欲向上を含む、ストレス解消の声が多数寄せられた。なお、本研究は、保護猫を介在動物とし、いのちを繋ぐ取組みも目指していた為、その保護猫をどのように確保するかが大きな課題であったが、大学の近隣で猫の保護活動を行う団体と連携することができ、保護猫を当プログラムの介在動物として定常的に派遣してもらう確約がとれた。このように、本研究を通して明らかにすることとしていた大学をフィールドとした場合の動物介在プログラムの実施協力体制のあり方、懸案となる課題への対策はすべてクリアし、大学生のメンタルヘルス、更には学習意欲の向上を促進するプログラムの開発は可能であること、またその存在意義の重要性を明らかにすることができた。
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