造血幹細胞移植(移植)を受ける患者・家族に対する心理的支援の実態を明らかにするために、調査を実施している。 【研究1】移植を受ける患者・家族の心理的支援を行うスタッフを対象に、活動状況、活動に際し配慮していること等について、自記式質問紙を用いて調査した。54名の対象者に調査票を配布し36名から回答を得た(有効回答率66.7%)。80%以上の対象者が、移植前および移植後から退院するまでの間に何らかの心理的支援を行っていたが、退院後の支援は63.9%にとどまっていた。支援の際は、患者の体調や治療状況をとらえ、自身の関わりが患者にとって侵襲的な体験にならないように配慮しながら気持ちを傾聴していた。くわえて、治療や生活、心理過程等についての説明をしたり対人関係の相談に応じたりして、主体的に治療や療養生活に取り組めるよう支援していた。そして、患者を支える医療チームの一員として、医師や看護師をはじめとする多職種との連携を常に意識しながら活動していた。 【研究2】移植を受けた患者を対象に、移植前から退院後までに臨床心理士から受けた心理的支援の内容、移植前から現在までの心理的変化等について、自記式質問紙を用いて調査を実施しているところである。現時点での集計結果では、心理士による心理支援を受けた患者は少ないものの、不安の緩和等につながっていた。患者の心理的変化について、移植前は移植への期待と死の不安を、移植後から退院までは回復への焦りや不安等を抱きがちであった。退院後は徐々に発病前の体力や生活に戻っていくことを実感する患者もいたが、再発や合併症に伴う不安と向き合いながら生活を送っている者も少なからず存在し、周囲の言動に傷ついた体験をもつ者もいた。そして、心理士に対し専門家としての支援を求めていた。 移植患者が、移植前から退院後まで継続的に、心理士による支援を得やすい環境を整えることが重要である。
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