研究課題/領域番号 |
26590160
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小田 真二 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60618073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オノマトペ表現 / 抑うつ改善 / 情動処理 / 五感 / マインドフルネス |
研究実績の概要 |
五感を音声的に惹起しやすいオノマトペ表現と抑うつ改善効果との関連を調べるため、当該仮説に関する理論的検討を進めた。具体的には、五感からの経験に基づく情動処理への転換により、うつ病の難治性に効果を発揮するとされる各種マインドフルネス療法等の文献検討を行った。また理論の精緻化をはかるため、言語学や音声学、民俗学などの周辺領域の文献も広く参照した。併せて、関連学会へ参加し、最近のトピックや知見について情報収集を行い、理論化への還元を試みた。これら理論的検討の成果をまとめ、第34回日本心理臨床学会で発表した。 加えて、オノマトペ表現の抑うつ改善効果を検証するための心理学実験を実施した。実験Ⅰは、情動喚起刺激に対して出来るだけオノマトペ表現するよう実験参加者に求め、その結果と個人の抑うつ度及び情動制御能力との関連を調べるものである。予備実験の結果、使用を想定していた一部の情動刺激に不備が認められたため、最終的に、本調査では、Gross & Levenson (1995)で設定されている動画4種(怒り、悲しみ、恐怖、驚き)と、Dan-Glauser & Scherer (2011)作成の写真画像からネガティブ4種、ポジティブ2種を使用した。検証の結果、抑うつ度の高い群では情動関連のオノマトペ表現が少ないことなどが示唆された。本研究結果の一部をまとめ、第35回日本心理臨床学会において発表予定である。続く実験Ⅱは、実験参加者を抑うつ状態に誘導したのち、積極的にオノマトペ表現を促す群と形容詞対による表現群との比較を行うものである。実験参加者に抑うつ状態を喚起する「偽りのゲーム開発」の設定に時間を要したが、現在、実験方法を完成させ、本実験の実施を重ねているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のように参加者に何らかの情動を喚起させる研究デザインを含む場合、ターゲット情動や意味のある情動状態を喚起させるには、予備実験を含めた入念な実験方法の策定が欠かせない。本研究においても、実験Ⅰではターゲット情動を喚起させる刺激の選定において、また実験Ⅱでは実験場面の設定に想定以上の時間を要したため、研究全体の進捗状況に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな瑕疵はないと判断されることから、引き続き本研究の実施を進めていく。但し、H28年度が実施の最終年度にあたることから、計画の遅れを挽回するよう鋭意取り組む。また一定のデータや成果がまとまった段階で、学会発表等を積極的に行い、研究全体の精度をあげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者にターゲット情動や意味のある情動状態を喚起させるため、予備実験を含めた入念な実験方法の策定が欠かせないが、実験Ⅰではターゲット情動を喚起させる刺激の選定において、実験Ⅱでは実験場面の設定に想定以上の時間を要したため研究実施に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験Ⅰにおいては本実験を終え、実験Ⅱにおいても本実験に移行し、実施を重ねデータを蓄積している状況にある。実験Ⅲにあたるインタビュー調査においても速やかに実施する。また一定のデータや成果がまとまった段階で、学会発表等を積極的に行い、研究全体の実施を完遂する予定である。
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