研究課題/領域番号 |
26590162
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
久田 満 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50211503)
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研究分担者 |
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
中村 菜々子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (80350437)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 看護職 / 避難行動 / 罪悪感 |
研究実績の概要 |
東日本大震災に伴い発生した原発事故の直後、政府は福島県沿岸部の住民に対して避難指示を出した。当時、病院等に勤務していた看護職も、遠方へ避難するか、あるいは命を捨てる覚悟で職場に留まり患者のケアを続けるかという選択を迫られた。Raphael(1986)は、災害時において他者の存在の対して義務や責任をもつ立場にある者がそれを無視せざるを得なかった場合、強烈な罪悪感に苛まれ、災害後の適応が極めて困難になることを指摘している。 本研究では、原発事故発生時に福島県沿岸部の病院等で勤務していた看護職を対象として質問紙調査を実施した。2017年11月~12月にかけて、福島県内の医療施設(合計23)に調査票を郵送し、回答後返送してもらうよう依頼した。合計580部を配布し、435人分の回答(有効回答率75%)を分析対象とした。調査内容は、1)避難したか否か、2)その理由、3)回答時での罪悪感を含む感情や災害に対する認識などである。 分析対象者のうち、避難した人は137名、しなかった人は298名であった。避難した理由として最も多かったのは「子どもや親など、守るべき家族がいたから」で全体の72%を占めた。一方、避難しなかった理由としては、多い順に「患者さんへの対応をする必要があったから(43%)」、「看護師としての使命感があったから(33%)」、「職場の人手が足りなかったから(25%)」であった。調査時点での感情や災害に対する認識を避難した群としなかった群で比較した結果、避難した群は罪悪感をより強く感じており(P<.001)、命の尊さをより強く意識していた(P<.05)。 以上の結果より、Raphael(1986)が指摘しているように、避難に伴って罪悪感や後悔の念が生じることが明らかとなった。今後さらに分析を続け、どのような要因が罪悪感の増減に関係するのかを検討していく予定である。
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