研究課題/領域番号 |
26590165
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
樫村 正美 日本医科大学, 医学部, 講師 (00550550)
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研究分担者 |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症 / 軽度認知障害 / 非薬物療法 / 心理社会的介入 / 介護家族 / START / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
本研究では、高齢者および介護家族を対象とした心理社会的介入法の開発を行った。今回の計画では、特に軽度認知障害や軽度認知症の高齢者の抑うつや不安といった気分改善、そして介護家族の介護負担や介護ストレス軽減に介入標的を絞って検討を行った。 軽度認知障害・軽度認知症高齢者を対象としたアプローチでは、気分改善に有効とされる認知行動療法に注目し、全8回で行われるプログラムを開発した。まず、気分の悪化を認めない5名の軽度認知障害高齢者を対象にプログラム内容の理解度の確認を行った結果、特に問題なく実施できることが明らかとなった。実施結果を基にプログラムを一部修正し、プログラムを完成させた後、5名の軽度認知障害高齢者を対象に対照群を設けない単群のみの介入研究を実施した(内、2名は実施中)。その結果、介入後で気分や生活の質の改善を認め、3ヶ月フォローアップ時まで効果が持続していた。しかし、12ヶ月後まで追跡できた1名に関しては得られた改善効果がほぼ消失してしまっていたことから、介入後はこまめのフォローアップが必要であると考えられる。 介護家族を対象としたアプローチでは、英国においてすでに実証研究で成果が示されているSTART(STrAtegies for RelaTives)という心理教育的プログラムを導入し、原著者の許可を得た上で一部社会制度の異なる部分を修正し、日本語版STARTを作成した。現在まで軽度認知障害・軽度認知症の家族成員を持つ介護家族10名に対して介入研究を起こった(内1名は実施中)。全体的には介入後において介護家族の気分の改善や主観的介護負担の軽減、生活の質の向上など前向きな結果が示され、6ヶ月後フォローアップ時でも比較的得られた効果は持続されていた。介護家族支援が喫緊の課題であるわが国において、有効な支援法となりうるアプローチの開発に着手できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画遅延は、高齢者を対象とした介入研究によるところが大きい。軽度認知障害・軽度認知症を対象としているため、病識の欠如を示す高齢者や意思決定が不安定な高齢者が多く、研究リクルートが想像以上に難航してしまったこと、これに加え、高齢者であるが故の突発的な体調不良の多さにより介入の中断や開始の見送りなどを強いられたことが主な理由としてあげられる。 介護家族を対象とした介入においても、計画通りの参加者数を募ることが難しい。この理由としては隔週に一度のペースで全8回のカウンセリングを受けなければならず、日々の介護に加えて家事や仕事など日常生活でしなければいけないことが多い多忙な介護家族にとっては、通院負担も多くのしかかったことで参加者の数を伸ばすことが難しかったこともあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究では、プログラムの開発と実施可能性について検討することができた。今後としては研究参加者数を増やすことにより、効果検証のための研究デザインを検討することが求められる。そのためには、研究分担者や協力者をさらに募り、介入の実施場所を増やすなど、研究組織を豊かにする努力をしていかなければならない。 また上記の遅延理由に関して、今後の研究計画においては、地域の医療機関を積極的に活用することにより、高齢者や介護家族の通院負担を極力減らしたり、あるいは多忙な介護家族のために短縮版のプログラム開発を検討するなど、より参加しやすいような研究デザインの見直しが求められる。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度で計画していた介入研究において、研究協力者のリクルートが難航してしまったたため、支出を見込んでいた物品費や人件費・謝金が発生しなかった。旅費における差額については極力介入研究で発生する人件費・謝金に支出を回すために旅費の使用を抑えたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究遅延のため、1年の延長申請を行った。現在も継続実施中である介入研究を進めることにより、上記差額は解消され、年度内の完全消化を図ることが可能である。
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