研究課題
本研究の目的は,ラットの検索誘導性忘却に関与する脳部位を特定し,さらにはそれら脳部位でのグルタミン酸NMDA受容体の役割を検討することである。そのためにまず本年度は,ラットの自発的物体再認テストを用いて,検索誘導性忘却が観察できる条件を探索することを目的とした。Long-Evans系雄ラットに対して,見本期で2つの異なる物体(A, B)を提示した60分後に,一方の物体(B)のみを提示する検索期を経験させた。その結果,検索期の60分後および120分後に行われたテスト期において,ラットは検索期で提示されなかった見本物体(A)と新奇物体(C)を弁別することができなかった。以上の結果は,ラットの自発的物体再認テストにおいて検索誘導性忘却現象がみられることを示す初めての証拠である。さらに,記憶を阻害することが知られているグルタミン酸NMDA受容体遮断薬を検索期の直前に投与されたラットでは,その後のテスト期において新奇物体を弁別できたことから,検索誘導性忘却にはグルタミン酸NMDA受容体が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り,ヒトで知られている検索誘導性忘却現象を,ラットの自発的物体再認テストにおいて再現することに成功した。
検索期からテスト期までの遅延時間が比較的長い条件(2時間以上)で検索誘導性忘却が認められたので,当初の計画通り,統制群,検索誘導群において,遅延時間中に灌流固定後ラットの脳を取り出し,クリオスタットで脳切片を作成した後,抗c-Fos抗体を用いてアビジン・ビオチン・コンプレックス法による免疫組織化学を行う。光学顕微鏡下で海馬,歯状回,海馬周辺領域,さらに前頭前野,中脳におけるc-Fos免疫陽性細胞を観察する。これにより,検索誘導性忘却に伴うc-Fos蛋白発現細胞を検索し,c-Fos蛋白発現細胞が顕著にみられた脳領域に対するNMDA受容体遮断薬AP5の局所投与の効果を検討する。
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