研究課題/領域番号 |
26590177
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
篠原 一光 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60260642)
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研究分担者 |
木村 貴彦 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 准教授 (80379221)
紀ノ定 保礼 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (00733073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 拡張現実(AR) / 単眼観察 / ヘッドアップディスプレイ(HUD) / 運転支援 |
研究実績の概要 |
◆現実空間上に人工的な映像(虚像)を重ねて表示する拡張現実(Augmented Reality: AR)は、さまざまな作業を行う際の視覚情報提示方式として有望であり、ヘッドアップディスプレイはその実用化の一例である。しかし、視覚的認知の観点では、視線移動が少ない場合であっても、複数の見るべき対象に対する視距離に差がある場合には視覚的注意の奥行き方向の移動が必要となり、視認しやすさに影響が生じる。この問題を解消する方法として、虚像を単眼にのみ提示する単眼式拡張現実視覚提示(以下単眼ARと略す)を提案している。 ◆我々は既往研究において視覚的注意における単眼ARの利点を明らかにしているが、本研究ではドライビングシミュレータ運転時でも利用可能な方式で単眼AR装置を作成し、提示される情報の視認特性、現実空間内に出現する刺激の検出への影響などを検討した。 ◆単眼ARでは虚像観察時には奥行手掛かりである両眼視差が生じないため、虚像の出現位置が明確に知覚されず、既往研究の知見から虚像はより遠くに(現実空間に近づいて)知覚されると考えられ、このため視覚的注意の奥行方向の移動が生じにくいと予想される。本研究で制作した機器により虚像を単眼もしくは両眼で提示し、その虚像までの距離を言語評価させたところ、単眼提示の場合には虚像までの距離は常にほぼ一定に評価された。 ◆続いてドライビングシミュレータを運転しながら虚像(数字)を前方運転風景に重畳させ、虚像を読み取ると同時に、運転風景内に出現する光点刺激に反応するという実験を実施した。この実験では通常の車載ディスプレイの情報を視認するのに比べて光点刺激検出をより速くできることが示されたが、両眼・単眼提示による光点への反応の違いは見られなかった。虚像の特性によって両眼・単眼提示の効果が異なる可能性が考えられ、さらに検討を進める必要があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題で新たに作成した単眼AR装置を使った実験では、本研究課題を実施する以前より別装置にて行ってきた研究結果となかなか整合せず、実験の進展が遅れた。また、研究を行う中で単眼AR装置で提示する虚像の特性や、虚像に対して行う課題の内容が、観察条件に対して大きく影響することがわかってきた。これらは本研究課題を計画していた時点で想定していなかったものであり、計画外の実験を行う必要が出てきたため、やや遅れていると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
虚像の特性(大きさ、内容)を変えることで、観察条件の効果(単眼か両眼か)がどのような影響を受けるかについて実験を追加して行うことを予定しており、すでに平成27年度中に実験に着手している。これらを完了した時点で論文発表等を行い、本研究課題の枠組みでの研究を終結させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
◆実験の進行に伴い、本研究の目的から考えて検討すべき問題点が生じたが、平成27年度中にこの問題を検討するための実験を実施することが出来なかった。このため、次年度(平成28年度)においてこの実験を行いたいと考え、次年度使用額を残した。 ◆上記の研究進行の遅れのため、研究発表(学会発表・論文発表)が出来ておらず、出版費、英文校閲費、学会参加費の支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は実験実施費用(実験参加者謝礼、装置改修費等)、および、研究成果発表費用(論文掲載料、英文校閲費、学会参加費等)として使用する予定である。
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