研究課題/領域番号 |
26590180
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川辺 光一 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30336797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 虚連合記憶 / 妄想 / 統合失調症 / 動物モデル / ラット |
研究実績の概要 |
統合失調症で認められる妄想の認知的基盤として、記憶の誤った連合である虚連合記憶を仮定し、統合失調症モデル動物において虚連合記憶が起こるかどうか検証することを目的とした。ここでは統合失調症モデル動物として、MK-801投与ラットを用いた。この薬物は、幻覚・妄想といった統合失調症の症状とよく似た症状を引き起こすとされるフェンサイクリジンと同様NMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬である。また虚連合記憶テストとして、自発的物体弁別課題を応用した手続きを用いた。 このテストは見本期、干渉期、テスト期の3つのフェーズからなっていた。見本期ではオープンフィールド内に嗅覚刺激Aを塗布した物体Xを4つ置き、5分間にわたりラットに各物体を自由探索させた。干渉期ではプラスチックケージ内で嗅覚刺激Bを2分間提示した。テスト期は、オープンフィールド内に見本期で提示した物体Xと新奇物体であるYを2つずつ置いた。それぞれのいずれかには嗅覚刺激Aを(AX、AY)、もう一方にはBを塗布し(BX、BY)、ラットに各物体を5分間にわたり自由に探索させた。干渉期、テスト期はそれぞれ見本期終了の5分後、60分後より開始した。MK-801(0.05、0.1mg/kg)はテスト期の15分前に腹腔内投与した。薬物投与によって虚連合記憶が生じた場合は、単独の物体刺激、嗅覚刺激としては既知であるが、これらが組み合わさった複合刺激としては経験のないBXを既知刺激とみなし、これを探索する傾向が小さくなることを予測した。しかしながら、本研究ではMK-801投与によって虚連合記憶に相当する現象を引き起こすことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の結果ではMK-801投与ラットにおいて虚連合記憶と思われる現象が認められなかったことから、テストの手続きの改良を行う必要があると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
刺激の種類や実験スケジュールの変更など、今年度行った自発的物体再認課題を応用した虚連合記憶テストの手続きを改良する予定である。またアンフェタミン、メタンフェタミンなどの覚醒剤、フェンサイクリジンなど、人間において妄想を引き起こすとされる別の種類の薬物を使用してこのテストを実施する。さらに、恐怖条件づけの手続きを応用したテスト法も実施し、潜在記憶における虚再認記憶についても調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は恐怖条件づけの手続きを応用した虚連合記憶テストは実施せず、その準備にとどまった。そのため、この実験で使用する予定の文脈手がかり(装置内刺激)やラットを購入しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
恐怖条件づけの文脈手がかりとして用いる装置内刺激、および今年度の研究と同様、ラットや薬品の購入が研究費の主な使途となる。
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