研究課題/領域番号 |
26590180
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川辺 光一 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30336797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 虚連合記憶 / 妄想 / 統合失調症 / 動物モデル / ラット |
研究実績の概要 |
前年度は自発的物体弁別テストで用いられる手続きを利用して、MK-801を投与したラットについて物体刺激と嗅覚刺激の間の虚連合記憶が生じるかどうかを調べたが、虚連合記憶に対応すると考えられる明確な現象は認められなかった。この実験手続きが嗅覚刺激の弁別能力を測定するのに適切でなかった可能性も考えられたため、今年度は上記の手続きがその測定に妥当であるかどうかを検証することを目的とした実験を行った。 行動テストは見本期とテスト期の2つのフェーズから構成された。見本期においては、4つの同じ物体に同じ嗅覚刺激を塗布した刺激をラットに提示した。テスト期では、物体のうち2つに見本期と同じ嗅覚刺激(既知刺激)を、残りの2つに別の嗅覚刺激(新奇刺激)を塗布した。ここで用いる嗅覚刺激のペアとして3種を用い、それぞれのペアについてテストを行った。弁別の指標として弁別率(=新奇刺激への探索時間/両刺激の探索時間)を求めたところ、3種のペアのうちバニリン-シンナムアルデヒドのペアが最も弁別率が高かった。しかしながら、これらの嗅覚刺激に対する選好性を調べたところバニリンを好む傾向が認められたことから、選好性の違いが弁別率の差として現れた可能性も否定できない。 また、恐怖条件づけの手続きを用いた虚連合記憶テストの予備実験として、この条件づけの手続きにおいて嗅覚刺激の弁別が可能かどうかについても調べた。ベンズアルデヒド、サリチル酸メチルの2種類の嗅覚刺激を弁別刺激として用い、いずれかの刺激提示下では電撃を与え、もう一方の提示下では電撃を与えないという訓練を行ったのち、弁別テストを行ったところ両刺激の間にすくみ反応率の差は認められなかった。したがって、今回の手続き内ではラットは嗅覚刺激を弁別できない、もしくは今回の手続きが弁別課題の手続きとして適切でない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、自発的物体再認テストの手続きを利用し、人間において妄想を引き起こすとされる薬物を投与したラットに虚連合記憶が生じるかどうかを調べることである。しかしながら、上記の手続きが今回仮定している連合記憶の要素の一つである嗅覚刺激の弁別テストとして適切であるかどうかは明らかではなかった。今年度はそれを調べるための予備実験を実施していたために、全体的に進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は自発的物体再認テストおよび恐怖条件づけなどの手続きを利用し、人間において妄想を引き起こすとされる薬物(アンフェタミン、メタンフェタミン、フェンサイクリジンなど)を投与したラットに虚連合記憶が生じるかどうかを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はラットの虚連合記憶を調べる上で必要な予備的な実験を中心に研究を進めた。本来の目的である虚連合記憶自体を測定する実験については実施できず、これに必要な薬物類を購入しなかったことにより未使用の助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度未使用の助成金については主として上述の薬品の購入に充てる予定である。
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