研究課題/領域番号 |
26590181
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
高橋 雅延 聖心女子大学, 文学部, 教授 (10206849)
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研究分担者 |
清水 寛之 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30202112)
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (70253242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超記憶力 / 加齢 / 言語性記憶 |
研究実績の概要 |
平成26年度は高齢超記憶力者の原口證氏(現在69歳)の記憶能力の特徴の解明を目的として、言語課題と図形課題の13の下位検査からなるウェクスラー記憶検査を行った。この記憶検査はアメリカで開発されたもので、病院等の検査で一般的に使用されているものであって、その特徴は、単なる「記憶力」というのではなく、それを5つ(言語性記憶、視覚性記憶、一般的記憶、注意/集中、遅延再生)に分けて調べることができるという点であった。そして、同年代の多数の方の成績と比べて、指標という形で得点が出され、指標は100が年齢相当ということで、100を超えれば「優れている」、100を下回れば「劣っている」と判断できるものである。 その結果、原口氏の一般的記憶(記憶全般)は142ということで「きわめて優れている」と判定できた。あとの、言語性記憶は130、視覚性記憶は104、注意/集中は126、遅延再生は119という指標であった。視覚性記憶(色の検査)がほぼ年齢相当であるという点を除いて、すべて「優れている」と判定できた。なお、視覚性記憶は当日の照明の条件が悪かったため、得点が伸び悩んだのではないかと推察された。これらの結果を総合的に見ると、原口氏の記憶力にはまったく問題がないだけではなく、長年にわたる語呂合わせで鍛えられた言語性記憶はトップレベルとあると判断できた。また、一般に、高齢になると、注意/集中の得点が急速に悪くなるにもかかわらず、今回の検査得点を見ると、こちらも「きわめて優れている」と判断できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
原口氏と実験者とのスケジュール調整の困難な理由から、展望的記憶課題(実験的課題、日常場面の記憶行動に関する日常記憶質問紙とメタ記憶質問紙の回答)が出来ていない。同様に、原口氏の20代の頃の1970年の日本万国博覧会という社会的な出来事の記憶を含めて、過去40年間の出来事や各年代で活躍した有名人の写真を使った自伝的記憶課題が実施できていない。 これら以外に、平成26年度は予想以上に研究協力者のリクルートが困難であったことと、実験者のスケジュール調整の問題から、当初予定していた60歳代の統制群の参加者のデータが取れていない。
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今後の研究の推進方策 |
すでに原口氏には平成27年度の夏期休暇中に残りの記憶課題の実施の確約を取り付けてある。60歳代の統制群の参加者のデータに関しては、研究代表者および2名の研究分担者の学部、大学院のゼミ生に協力を得てリクルートを行い、平成27年の夏期休暇中にデータ収集を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた原口氏のデータ収集や統制群の参加者のリクルートの遅れのため、これらのデータ収集に必要な金額が次年度使用額という形で残された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において、遅れている原口氏と統制群のデータ収集を行う際に使用可能である。
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