研究課題/領域番号 |
26590184
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
遠藤 孝夫 岩手大学, 教育学部, 教授 (70211779)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヴァルドルフ学校運動 / ナチズム / ヴァルドルフ学校 / ルドルフ・シュタイナー / エリザベート・クライン / ルドルフ・ヘス / ボイムラー / 教育的抵抗 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)運動がナチス当局によって如何に評価され、如何なる措置が取られたのか、またヴァルドルフ学校側は如何なる対応や行動を行ったのについて、一次資料の蒐集と分析を通じて解明することを目的としている。研究2年目となる平成27年度は、ナチス体制化で存在した個別のヴァルドルフ学校のうち、ハンブルクに設置されていたハンブルク・ヴァンスベク校とハンブルク・アルトナ校、最後に閉鎖となったドレスデン校への訪問調査、ナチス当局とヴァルドルフ学校運動の間で交わされた文書の蒐集のため連邦公文書館での資料調査を予定していた。 このうち、ハンブルクの2つのヴァルドルフ学校への訪問調査は日程が合わず実施できなかったが、ドレスデン校への訪問調査と同校文書館への資料調査、ベルリン(リヒターフェルデ)にある連邦公文書館での資料調査・蒐集を実施することができた。これらの訪問調査及び資料調査により、ナチス当局による措置とヴァルドルフ学校側の対応の実態を一次資料に基づいて明らかにできる見通しを持てるとともに、ナチズム体制の下においてヴァルドルフ学校の内部での教育活動の実態についても一次資料により解明できる見通しを持つことができた。特に、連邦公文書館資料に加えて、当時のヴァルドルフ学校運動の中心として活躍したエリザベート・クラインとレネ・マイコヴィスキーの回想録、ナチズム期にドレスデン校で学んでいた元生徒達の回想記録集を入手できたことは大きな成果であった。 こうした一次資料の分析の結果、ナチズム体制下のヴァルドルフ学校は、決してナチズムへの迎合や協力を行ったのではなく、面従腹背的な運動を通して、最後までヴァルドルフ教育の本質は貫徹していたこと、こうしたヴァルドルフ学校の教育活動はナチズムへの1つの「教育的抵抗」として評価できる、との研究仮説を導くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で予定していたヴァルドルフ学校及び連邦公文書館への訪問調査と資料蒐集について、ほぼ予定通り実施することができた。また、蒐集した資料の分析を通して、上記の通りの本研究の最終的な結論への見通しを持つことができた。 平成28年1月3日から3月31日まで胸椎骨折のため入院と行基休暇を余儀なくされたことから、今年度の研究成果を論文としてまとめることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に予定していたヴァルドルフ学校への訪問調査のうち、1940年まで存続したハンブルク・ヴァンスベク校への訪問調査と関連資料調査が必要である。また、27年度に訪問調査したドレスデン校についても、同校文書館での追加の調査が必要である。さらに、ナチス当局(特に帝国教育省、帝国保安本部)によるヴァルドルフ学校運動への措置とヴァルドルフ学校運動側の対応の実態の解明のために、連邦公文書館(ベルリン・リヒターフェルデ)とヴァルドルフ学校連盟文書館での追加の資料蒐集も必要と考えている。これらの資料調査・蒐集を行った上で、分析・考察を加えて最終的な結論を導きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年1月3日に胸椎を骨折し、手術・入院及びリハビリのために同年3月31日まで病気休暇を取得することとなった。このため、平成27年度の最後の3ヶ月間、研究を行うことが実質的にできなくなり、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額となった49,401円は、本研究に関連した図書購入費と消耗品費として使用する予定である。
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