本研究は、従来の教育学の分析枠組みを教育政治学の分析枠組みへと転換させるための土台づくりを行うものである。その際、教育と政治が分離してきた歴史的経緯の分析を行うと共に、教育が政治化している今日的局面を、シティズンシップ教育と、首長主導の教育改革に着目して分析してきた。特に、最終年度である本年度は、過去2年間の成果をふまえ、教育政治学の分析枠組みを精緻化していく作業を行った。さらにその作業と並行して、教育政治学の理論枠組みを現実の政治分析に適用する作業を試みることによって、規範・実践の学と実証科学とに分離してきた現代政治学のパラダイムを革新しうるような分析の視角の提示を試みた。そしてその成果を、日本政治学会の学会誌に発表した(小玉重夫・荻原克男・村上祐介「教育はなぜ脱政治化してきたか-戦後史における1950年代の再検討-」『年報政治学2016-Ⅰ』日本政治学会、木鐸社)。そこでは、戦後の教育と政治の歴史に着目し、1950年代の教育政治について通説とは異なる理解を提示すると同時に、教育が政治化する陰で、現在に至る教育の脱政治化への転換点が1950年代に埋め込まれていたことを明らかにした。さらに、この論文にもとづいて、本研究の研究代表者を発起人として、日本政治学会に「教育と政治研究会」という分野別研究会を設置し、教育学と政治学を癒合した理論的革新の実戦を学会内部でも始めることに着手した。学会誌への論文掲載を実現し、学会内部での理論的革の新実践に着手し得たことで、本研究の当初の意図が達成され得たといえる。
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