本研究のテーマは、「高度専門職業人養成の教師教育における大学教員の資質要件に関する研究」である。 近年の高等教育改革の専門職養成では「実践」が重要視され、養成カリキュラムの重点化や実務家教員の導入などの大きな変化が見られる。それは大学における専門職養成の「理論と実践」の問題を包含し、「臨床の知」を「学」に形成するプロセスでもある。 本研究では、実務家教員の比重が大きい教職大学院に焦点をしぼり、国内外の実態の質的調査研究を通して、教師教育を担う大学教員の資質要件を多面的に解明した。 調査は、全教職大学院の質問紙調査と抽出大学の訪問調査を主とし、同時に大学教員の資質向上に取り組む総合大学の事例調査を行い、また海外の先進的事例としてシンガポールの訪問調査を行った。さらに、これらの結果を踏まえ、研究会を開催し本テーマに関する議論を深めた。 本研究では以下の結論が得られた。実践に関連するキーワード「実践」「実践知」「実務」「実践研究」「実務家教員」等の理解は多様で、具体的な内容は十分に共有されていない。また教職大学院における「研究」に関する概念の理解も同様に十分に共有されているとはいえない。実務家教員の割合や定義も大学により異なり、求められる資質も一様でなく、どれも模索段階にある。今後「実務家教員」というカテゴリーがもつ「実務」と高度専門職業人養成で必要とする「実践」の具体的内容の検証と共通理解、また「実践研究」の定義、「実務家教員」と「研究者教員」という区分が持つ意味の検証が求められる。教職大学院における多様な実務家教員の実情と供給の現状を背景に、教職大学院における教員の具体的な質保証と質を担保した養成の開発が急務である。 最終年度は全体の取り組みと成果をまとめ、最終報告書の冊子を作成した。研究終了後、国内外の学会を中心とした発表および論文投稿を予定している。
|