申請時、本課題の概要を次のように書いた。「本研究は、近代日本の教育、とりわけ植民地期朝鮮における天皇崇敬教育と学校儀礼について「誓い」「表象」「身体」をキーワードとして据えつつ、多面的に分析する。こうした分析視角を用いることによって、「皇民化運動」「同化教育」といった従来の研究枠組では捉えきれなかった問題群を掘り起こすことが可能になる。本研究は、今日的ないわば狭義の日韓・日朝の相互理解の深化に資するばかりでなく、東アジアに共有されうる教育課題の存在にも、歴史的観点から迫ることが期待できる。」 これに対し、2年目であり最終年度となった平成27年度には、次のように研究を行った。第一に、1940年代植民地期の朝鮮扶餘に創建された官幣大社である扶餘神宮の研究である。これは、朝鮮初の神宮である朝鮮神宮を中心として重ねてきた自身の研究を、時代的にも空間的にも広げ、深めるものである。具体例として、教練の成果を示す場として繰り広げられたスポーツイベント(扶餘神宮と朝鮮神宮とを結ぶ駅伝と自転車競走)を取り上げ、これまで研究資料の欠如によってほとんど詳述されることのなかった軍事教練や「修練」について、身体の動員という分析視角から迫った。 第二に、植民地期台湾の学校における天皇崇敬教育と学校儀礼について、研究に着手した。このテーマは、新規採択課題「日本植民地の学校教育に見る民族意識の形成」(課題番号16K04491)で引き続き展開する計画である。
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