研究課題/領域番号 |
26590205
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
吉村 充功 日本文理大学, 工学部, 教授 (10369134)
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研究分担者 |
山本 啓一 九州国際大学, 法学部, 教授 (30341481)
成瀬 尚志 京都光華女子大学短期大学部, ライフデザイン学科, 講師 (60467644)
藤野 博行 九州国際大学, 法学部, 助教 (20708713)
石川 勝彦 熊本県立大学, 全学教育推進センター教学IR室, 特任講師 (30714779)
梶原 健二 九州女子短期大学, 子ども健康学科, 講師 (90726481)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育学 / 教育評価 / ジェネリックスキル / ルーブリック評価 |
研究実績の概要 |
まず、本研究グループでは、ジェネリックスキル育成のための教材として、参加者に「資料読解・分析、問題発見、アイデア提示、プレゼンテーション」というプロセスをグループで取り組むことにより、課題解決力と協働力を育成する汎用的学修プログラムを開発した。そして、このプログラムを大学間連携事業(以下「産業界GP」とする)で実施した学生及び教職員FD対象のジェネリックスキル育成ワークショップ(以下「GS育成ワークショップ」とする)、九州内にある国立大学でのFDワークショップにおいて試行した。また、その参加者について、本研究グループが開発したルーブリックに基づき、プレゼンテーションの直接評価と、課題解決力・協働力の自己評価を試みた。ルーブリックの開発については、産業界GPが開発したメタ・ルーブリックを本研究グループで改良したものを基礎として、個別ルーブリックを作成して試行した。その結果、プレゼンテーションについては、プログラムに参加した学生と教員の評価がほぼ一致した。課題解決力・協働力の自己評価も、プログラムの事前に実施したものより事後に実施したものの方が上昇した。以上より、GS育成ワークショッププログラムのジェネリックスキル育成に対する効果と、ルーブリックを用いた評価の信頼性について、意義のある研究成果を出すことができた。 つぎに、GS育成ワークショップと、産業界GPの複数の育成プログラム(チーム作り研修、インターンシップ、成果報告会など)を有機的に関連させて実施することができた。本研究グループと産業界GP採択校との連携・協力体制の強化のほか、評価の前提となる育成の狙いや達成目標の明確化、産業界GPが実施するすべての研修について評価を試行することによる、研修参加者の成長のプロセスの可視化などの点で意義のある成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画のうち、評価方法の構築とそのために必要となるメタ・ルーブリックと個別ルーブリックの研究、文献調査については、産業界GPで実施したものが当初の予想以上に進展した。そこで、本研究グループではメタ・ルーブリックの改良を実施するにとどまった。 ジェネリックスキル育成のベーシックプログラムの教材開発と評価プログラムの整理については、産業界GPが実施するGS育成ワークショップの教材・評価指標を開発し、プログラム運用ならびにルーブリックに基づく間接評価・直接評価を試行した。GS育成ワークショップについては、産業界GPにおいてまず平成26年8月に実施した。そこで得た知見をもとに、プログラムおよび評価指標を修正し、平成26年12月に九州内にある国立大学においてワークショップ(FD・SDフォーラム「アクティブラーニングの実践と方法」)を実施した。このワークショップで得た知見をもとに、さらにプログラム修正を行ったものを平成27年3月に産業界GPにおいて実施した。 ヒアリングについては産業界GPのGS育成ワークショップの翌日に行われた研究会で実施した。本研究グループ独自のヒアリングについては、FD・SDフォーラムでのワークショップの際に実施した。 当初の想定以上に計画が進展した点については、GS育成ワークショップを、産業界GPで実施されてきた人材育成事業と有機的に結合させたうえで実施できたことである。複数の研修で統一した指標による評価を実施することは、成長のプロセスを可視化するという点で意義がある。また、産業界GPは平成26年度をもって事業終了となったが、本グループと産業界GP採択校との連携のための関係づくりも当初の想定以上に進んだ。現在、上記のワークショップで得た知見をもとに、産業界GP採択校と合同での人材育成プログラム実施を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
1 他地域での教育プログラムおよび評価プログラムのオフキャンパス研修の実施 分担研究者の一部は関西圏の大学に所属しているため、関西圏の大学にて研修を行うことが十分可能である。まずはFD研修の形で教員を対象としたワークショップを計画する。その後、他地域の大学との関係づくりを進める中で、学生を対象に実際にオフキャンパス研修を行う。オフキャンパス研修プログラムはすでに教養課程仕様のプログラムを、ふり返り、成績評価、学修評価の手続きも含めたパッケージとして開発済みである。さらに、インターンシップをベースに企業・地域連携型のPBLを開発済みであるため、専門科目用の研修プログラムのプロトタイプも開発済みと考えている。各大学のカリキュラム・ポリシーやコースデザインにローカライズする形で研修をカスタマイズすることは十分可能であり、カスタマイズのための議論そのものが良質な教員の能力開発機会となると考えられる。
2 専門教育におけるジェネリックスキルの評価プログラムの試行 専門教育の目標はいうまでもなく専門知識と技能の育成であるが、こうした知識と技能を組織のなかで水平展開するために必要な組織行動やリーダーシップをはじめとしたジェネリックスキルは欠くべからざる育成対象である。研究代表者および研究分担者が所属する大学・短大においては、すでに専門教育のなかでジェネリックスキルを育成するプログラムの試行を継続している。地域企業との連携に基づくPBL型授業、PBL型の中期インターンシップ、高大連携、学部横断的なPBL型授業等である。各大学のアクティブラーニングの手法を持ち寄り、専門領域によらず適用可能な、カスタマイズの余地の高い教育プログラムの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の当初計画と比較して大きな差額が生じた費目は「物品費(消耗品費)」及び「旅費」である。本研究グループは異なる大学等の研究者で構成されているため、研究打合せ等の実施が重要となるが、計画した打合せ回数、検討ワークショップ及び研究成果の発表の実施等については当初の計画通り実施ができた。研究打合せの実施においては、他の研究会や会合、研修会のスケジュールに合わせて実施することで、旅費、消耗品費を節約できたことが使用差額が生じた主な原因であり、特段問題があるものではない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度は他の会合や研修会が頻繁に開催されたため、そのスケジュールに合わせて本研究の打合せを実施することで旅費等の大幅な節約ができた。しかしながら、平成27年度は他の研修会などの開催が少なくなることが予想されており、本研究グループ単独での打合せ等を実施する予定としている。また、本研究グループの研究分担者2名が、所属変更による居住地変更をしているため、打合せにおいては当初計画より旅費がかかることが見込まれている。以上のことから、次年度繰越金と翌年度分として請求した助成金により当初予定の平成27年度の研究実施計画を着実に履行することとする。
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