研究課題/領域番号 |
26590215
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤村 正司 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (40181391)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ライフコース / 外国人教員 / 高等教育組織 / アクティビラーニング |
研究実績の概要 |
ユニバーサル化に達した大学教育の質保証のため、多様な学生を指導する大学教員の能力開発が急務であり、そのためのマネジメントが必要とされている。27年度の調査目的は、大学教員の役割取得と能力開発に関わって基礎的なエビデンスを得ることにある。27年度は、研究実施計画の照らして、以下4点の成果を得た。 (1)大学教員の能力形成に当たって外国人教員(国立大学380人)を対象に意識調査を行った。外国人教員から観て、日本の国立大学の教育・研究活動にあたって自律性が極めて大きいこと、反面で教学マネジメントに不満が大きいことが明らかになった。 (2)法人化後の国立大学の教員組織と事務機構の分析から、大学本部職員の増加、副学長他理事の増加から、教授の権限が失われ、官僚制化が振興していることを明らかにした。管理運営と教学面での分離が進み、教員の役割が大学の意志決定(マネジメント)に参加できず、教育と研究に機能分化が進んでいることを明らかにした。 (3)大学教員の能力獲得の事例研究として教育社会学者「新堀通也」(1921-2014)を選択し、研究面での新堀教授のライフコースを質的に検証した。 (4)今日の大学教育の流れは,Teacher-oriented teachingからStudent-Centered teachingへの移行であるとされる。教員の能力開発において日々の授業が「意図した成果」を生んでいるのか、二次データを用いて検証した(「全国大学教員調査」東京大学教育学研究科大学経営・政策研究センター」5,311人)。授業方法として、教員の個人属性等を一定としてもなお、アクティブラーニング型と管理型を重視する授業方法は、学生の授業内容理解度について目標と実際について統計的に有意な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学教員の能力開発と役割形成に関わって、法人化後の国立大学の変化を組織論の視点から理論的・実証的に明らかにしたこと。外国人教員の視点から日本の大学教員の能力形成を相対化できた。加えて、教育社会学者であり、日本で最初に大学教授職研究を行った新堀通也教授のライフコースを質的に明らかにした。若手、中堅、シニア教員の抱える問題をインタビュー調査によって把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
教員のライフコースの枠組みで、各世代の課題が明確になるアンケートを作成し、実施する。 研究遂行の課題は、近年アンケートの回収率が低下するなかで、いかにして回収率を上げるか。また、調査結果を踏まえて政策的提言にどのようにつなげていくかが課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の実施を予定していたアンケート調査について年度内に実施できず、郵送費(切手代)に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
教員3,000名を対象に意識調査を実施する。
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