研究課題/領域番号 |
26590219
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小松 太郎 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (20363343)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際教育 / 教育開発 / 多文化共生 / 脆弱国 / ユーゴスラビア / ボスニア / 紛争 / 平和 |
研究実績の概要 |
研究初年度の本年では、教育、特に学校の機能と社会的結束性の関係性について、申請者によるこれまでの研究成果と照らし合わせつつ、国内・国外の最新の研究成果と理論的発展を確認した。これは、「紛争後社会の教育と多文化共生」『多文化共生社会におけるESD・市民教育』(上智大学出版社、2014年)にまとめられている。 本年度は、現地事前調査を2014年9月および2015年2月に実施した。2月の調査では、対象地域を絞り(スレブレニツア)、主に開放型インタビュー手法を用いて大規模民族虐殺が起きた地における教育現場のリアリティを掴む作業を行った。インタビュー対象者は、サラエボおよびスレブレニツア地域の初中等学校の校長を中心に、学校評議会委員数名を含む。インタビューの結果、多くの学校評議会が委員欠如等の理由により機能不全もしくは停滞している現実が明らかとなった。無報酬性に加え、本来想定されていた学校運営におけるアクティブな役割が期待されておらず、その役割が苦情処理などに限定されるといった理由が委員志願者を少なくさせており、コミュニティの関心低下をも招いていると考えられる。今後は、住民参加型学校運営が機能している個別ケースに焦点を当て、その社会的結束性への影響を調査すると同時に、より広く住民の役割を考慮に入れた学校の社会的結束機能について調べ考察していく。 なお、2回の現地調査においては、ボスニアの教育研究で知られるサラエボ大学教員のDr. KresoおよびDr. Kasumagicと研究内容および手法等について議論した。今後の研究にあたり、協力を頂くことも考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた主要先行研究のレビューと現地調査の実施は達成している。仮説の設定にあたっては、先行研究の成果と2014年度に実施した現地調査の成果を考慮する。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度(平成27年度)は、ボスニア国にて本調査を実施する。調査では、社会的結束の構築・回復が最も試されているスレブレニツア地域をケース・スタディとして、初・中等学校を引き続き調査する。対象校は主に前年度に訪れた学校を含め10校程度を想定する。これら学校の学校長、教員、地域住民、生徒を対象に半構造化インタビュー調査を行い、Heyneman(2003)の理論モデルに参照しつつ、学校の社会的結束機能について探究していく。また、学校評議会の委員にもインタビューを実施し、CBSM制度下の学校運営と社会的結束性の関係について、学校運営主要アクターの理解、課題認識、システム改善への提案を訊く。可能であれば、協議会の定例会議に出席し、非参与観察を行うが、民族関係がセンシティブな地域では困難が予想される。代替肢として、関係者へのイン・デプス・インタビューを通じてその実態に迫ることを考える。これら調査で収集したデータは、研究データ分析ソフトNVIVI10を用いて整理・分析し、その後の調査計画に反映させる。なお、当初予定していた質問票調査の実施については、これまでの現地調査の成果を鑑みて、その妥当性・有効性・実現性を慎重に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったノート型PCについて、その購入を次年度以降に持ち越すことを決めたこと、安価で通訳を雇用出来たこと等による。
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次年度使用額の使用計画 |
持ち越された使用額については、今年度にPC購入に使用するか、フィールド調査を充実させるために使用することを検討している。
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