研究課題/領域番号 |
26590222
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
古阪 肇 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20710536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英国独立学校 / 英国パブリック・スクール / グレート・スクールズ / パストラル・ケア / イングランドの教育 |
研究実績の概要 |
平成27年度には、9-10 月にかけて10日程度、イギリスへ研究調査へ赴くことができた。その際、学校訪問、聞き取り調査、文献調査を並行して実施した。文献調査に関しては、IOE(ロンドン大学教育研究所)において、英国独立学校、特にパブリック・スクールの情報収集に一定程度時間を割くことができた。また、申請書に聞き取り調査の対象校として挙げていたグレート・スクールズ9校のうち、前年までに訪問することができていなかった最後の1校を訪問し、当該校におけるパストラル・ケアを担当している教員に聞き取り調査を実施することができた。さらに、他のグレート・スクールズの1校においては特に集中して訪問し、教員のみならず、現在学校に在籍する生徒やその保護者、卒業生に対して幅広く、聞き取り調査を実施することができた。1864年に出版されたクラレンドン委員会報告書に模範校として挙げられた9校全校に、実際に足を運び、聞き取り調査を実施できた点は、今後のパブリック・スクールの礎を築く上で極めて大きな意義がある。 また、平成27年度にはパストラル・ケア研究の第一人者である教授への接触に成功した。この機会を通して、現在の研究テーマの重要性について再認識することができた点、また現在の研究の進行状況と方法論、あるいは今後のアプローチについてご教授頂けた点は、研究の進展に大きく寄与するものとなった。 研究実績の面において、本年度はこれまでに蓄積した英国パブリック・スクールにおけるパストラル・ケアに関する研究を、文献研究を中心にしてまとめ、発表した。現在英国の学校全体においてますますアカデミックな側面が重視される傾向においても、特に寄宿制を採る英国パブリック・スクールではパストラル・ケアのもつ役割が首尾よく機能し、生徒にとって重要なものであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校の異動により、勤務時間内での研究に割ける時間は前任校に比して限定的になった。そのため、研究の進捗状況は全体的にやや遅れているといえる。ただし、日数は短縮されたものの、1年に2度の海外調査については時間を割くことができたため、フィールドワークにおいて深刻な遅れはない。 現代の英国パブリック・スクールに関する研究は、世界的に稀少であり、英国の公立校に関する先行研究の数量に圧倒されている。公立校に学ぶ児童・生徒が全体の93%を占めることの他に、英国パブリック・スクールが閉鎖的であり、極めてアプローチし難い対象校であることがその理由のひとつとして挙げられる。しかし本研究を通して、学校関係者との人脈の構築をさらに強化することができた点に、大きな意義を感じている。 また、前述のようにパストラル・ケア研究の第一人者である教授に接触し、聞き取り調査に留まらず、同テーマにおける研究そのものの重要性・方向性について話し合う機会を得られた点は、研究成果に影響を与える貴重な機会となった。さらに、IOE(ロンドン大学教育研究所)の上級講師およびSOAS(ロンドン大学東洋アフリカ学院)の教授からも、研究上の有益な情報を入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、収集した聞き取り調査の結果の分析を行う。1つの方法として、パストラル・ケアの認識について5つのカテゴリーを設け、テキスト分析を実施するアプローチを検討している。 最終年度の計画の概要としては、前半には、学会発表を1回、後半には学会発表と継続中の実地調査、また年度末には研究成果を論文にまとめる予定である。 なお、当初予定していた質問紙調査については、質問紙のフォーマット完成後に修正を余儀なくされたため現在未実施であるが、可能な限り実施したい。研究対象校であるイギリスの中等教育段階の学校群は、時期的に4-6月まではexam termとなるため教職員・生徒ともに協力を得ることが困難である。したがって質問紙調査は、夏季休暇後の学年が変わった9月中ごろからの実施が望ましいと考えている。その間は、まとまって入手できた海外文献の精読に研究時間を充てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度より本務校が変わり、研究計画の変更があったことが第1の理由である。具体的には2度の海外での学会発表(香港およびアメリカ)をキャンセルし、さらにイギリスの現地調査を行う日程が、当初の計画よりも制限されたものとなったことが挙げられる。 第2に、質問紙調査に伴う経費(英文校閲費を含む)が未使用になっていることが挙げられる。これらは研究計画を1年延長し、最終年度となる平成28年度における研究過程においてすべて使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では、現地調査1回、国内学会での発表1回(大阪)、海外での学会発表1回(予算に余裕があればアメリカでの学会)、そして質問紙調査の実施を終えて論文にまとめる計画である。その研究過程に未使用の研究費を充てる計画である。
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