平成28年には、9月から10月に計12日間、英国にてフィールドワークを行った。その際、前年度と同様、学校訪問・聞き取り調査・文献調査を実施することができた。 平成28年の調査対象校は前年度と同様に、クラレンドン委員会によって1864年に発表され、模範校とされたグレート・スクールズの中から訪問校を選定した。以前の訪問により、ラポール(信頼関係)が構築されていたため、比較的に容易に訪問を実現することが可能となった。 具体的に、学校訪問では、ハロウ校、ラグビー校、イートン校を訪問し、パストラル・ケアに関する聞き取り調査を実施した。ハロウ校では、2名、ラグビー校及びイートン校では、それぞれ1名ずつの対応であった。インタビューの対象者は、主にパストラル・ケアに最も深く関わっている管理職の教員であった。またラグビー校では、寮長、生徒3名に対してもインタビューを行った。さらに同校では、生徒による校内・寮内の見学、寮長の紹介で教職員会議に参加することができた。同会議では、教員による生徒についての話し合いを見学し、教員間の連携や生徒についての情報共有・今後の方針等、同校におけるパストラル・ケアの一端について把握することができた。 文献調査については、IOE(ロンドン大学教育研究所)にて、英国独立学校数校の歴史的文献調査を調査する時間が取れた。 研究実績については、学会発表を実施した。発表までの研究過程を踏まえ、英国パブリック・スクールにおけるパストラル・ケアが教員間でどのように認識・解釈されているかを明らかにした。同発表では特に前年度、パストラル・ケア研究の第一人者に対して行った聞き取り調査を翻訳し、内容をまとめた研究成果について言及した。それにより、パストラル・ケアの現地での実情を体系的に把握するだけでなく、同氏によるパストラル・ケア研究の理論的観点を加味することができた。
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