一人の教師が,教育方法を工夫することで,より広い個人差に対応しようとする「学習のユニバーサルデザイン(Universal Design for Learning:以下UDL)」に注目が集まっている。本助成では,言語性ワーキングメモリ低位児に着目し,理科学習を中心とした問題過程における思考のつまずきや成功事例を考察した。 第一に,言語性ワーキングメモリを測定しワーキングメモリ低位児を抽出した。測定には,樋口ら(2001)の開発した,「児童版集団式リーディングスパンテスト」を採用した。第二に,ワーキングメモリ低位児の学習状況を観察した。板書を写すことやスケッチに困難があることや映像資料による支援の可能性が明らかになった。第三に,ワーキングメモリ低位児の全国学力・学習状況調査(理科)の解答傾向を分析した。複数条件を同時に比較検討することが困難であること,重さや粒子,方位などに強固な既有概念を持つこと,なじみの薄い器具の名称や類似する用語の区別が困難であること,メンタルローテーションが困難であることなどが示唆された。 以上の研究から,ワーキングメモリ低位児のUDL方略を検討した。
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