研究課題/領域番号 |
26590229
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
饗庭 絵里子 電気通信大学, その他の研究科, 助教 (40569761)
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研究分担者 |
松井 淑恵 和歌山大学, システム工学部, 助教 (10510034)
中川 誠司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70357614)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 楽器演奏方略 / 感覚情報 / 運動 / 暗譜 / エキスパティーズ |
研究実績の概要 |
高度な技能の遂行には,視覚情報や聴覚情報,触覚情報などの感覚情報が活用される.特に緻密な運動制御を行うためには長期間にわたる訓練が必要であり,また,自己の能力を最大限に発揮するためには自分にとって最適な情報処理方略をとる必要がある.ピアノ演奏を例にとれば,楽譜をすらすら読んで演奏(初見演奏)できる子どももいれば,楽譜を読むのは苦手だが教師の演奏を聞いて演奏(耳コピー演奏)することはすぐにできる子どももいる.つまり,音楽を楽譜から視覚的に読みこんで運動に変換することが得意な子と,演奏を聴覚から取り込んで運動に変換することが得意な子がいるということである.このような個人差は,それぞれが用いる情報処理方略の違いによってももたらされていると考えられる.本研究課題においては,高度な技能を遂行する際に優先して用いられる感覚情報の違いが,遂行する身体技能にどのような影響を及ぼすのかを解明することを目指す.そこで,ピアノ演奏について,プロのピアニストの演奏歴や実際の演奏を観察し,優先される感覚情報と演奏の間にどのような関係性があるのかを検証した. プロピアニスト約70名に対する質問紙調査の結果,耳コピー演奏が得意であると回答した演奏家は,耳コピー演奏が不得意であると回答した演奏家に比べて暗譜が得意であると回答していることが明らかになった.また,演奏実験においては,練習時に楽曲を音として聴覚からの入力を記憶したり,運動として記憶したりしようとする演奏家の方が,楽譜として視覚的に記憶しようとする演奏家に比べて,無意識のうちに楽曲を暗譜している量が多い可能性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した実験は,実験室的な設計であったが,より実践的な設計の実験に変更した.実験内容を変更したものの,当初目的は達成できていることから,おおよそスケジュール通りに進行していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
成果発表等を行う中で,高度な技能の獲得に迫るためには,縦断的な実験が必要であることが明らかになった.従って,数名の実験参加者を継続的に観察するような実験や,脳機能計測による変化の観察を行っていこうと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関による若手研究者支援の対象となったため,実験謝金の支払をそちらで賄った.
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次年度使用額の使用計画 |
オープンアクセスの論文誌に掲載が決定したことから,印刷費が申請より多額であるため,これにあてる.また,国際会議での招待講演の依頼を受けたが,旅費等は自己負担であるため,これにあてる.
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