研究課題/領域番号 |
26590233
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
東 直人 静岡大学, 工学部, 教授 (50192464)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ものづくり / 総合学習 / キャリア教育 / 地域連携 |
研究実績の概要 |
本研究は、工学系「ものづくり」教育活動を研究対象とし、テーマ、対象、内容と効果を精査するとともに、ロボット教材によるキャリア教育をテーマとした教材開発を行い、学校現場で総合学習、キャリア教育として活用できる教育カリキュラムを開発する。本年度は下記の研究活動を展開した。 1.活動実態の精査: 前年度に引き続き「ものづくり」教育活動の実態を各大学のホームページを中心に調査を行うとともに、特徴ある取組に対して、ヒアリング調査を行った。その結果、小中高校生を対象とした工学系「ものづくり」教育活動は、地域貢献を標榜した科学マジック講座、特定分野への動機付けを目的としたプレ大学講座、大学教育としてのPBL活動のいずれかに分類されることが分かった。本研究で標榜する総合学習、キャリア教育を志向し地域の教育現場の課題改善を目的とする活動は調査範囲では見当たらなかった。 2.アンケート調査の実施: ロボット教材を使用した場合の効果を予測するため、静岡県浜松市内の小中高等学校教員・生徒に対してアンケート調査を実施した。その結果、ロボット教材を使ったプログラミング学習は全ての児童・生徒の興味を喚起させることができ、学校教育の補完(トライ&エラーの繰り返しによる学習内容の理解・応用、忍耐・集中や努力、達成感・有用感など)、総合学習・PBL学習的要素(空間認知能力、言語力、論理的思考を育む教育)、キャリア教育的要素、教科横断的要素が含まれ、学校現場でも必要性が認識されていることが分かった。なお、実施にあたり指導者不足、安価な教材・カリキュラムを考えるための適切な指導書がないことが問題点として明らかになった。 3.教材開発: 小中高校で利用できる安価なロボット基板の設計・試作、指導者用参考資料の電子書籍化を行った。平成28年度も引き続き教材開発を行い、具体的な教育カリキュラムの開発に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、主に工学系大学・学部で展開されている「ものづくり」教育活動を研究対象とし、3年の研究期間で、全国で展開されている活動状況の把握、大学教育プログラムとして体系化するための準備作業、カリキュラムの開発を年次ステップアップ的に行っている。 本年度は、3年間の研究活動の2年目であり、「ものづくり」教育活動による「キャリア教育システム」開発の実施準備期間と位置づけ、全国の活動実態を精査することができた。また、地域の小中高等学校を対象にロボット教材によるキャリア教育システムの構築・整備に関するアンケート調査を実施し、カリキュラムの優位性と実施するにあたっての問題点を把握することができた。さらにロボット基板の設計・試作を行い教材開発に着手することができ、おおむね本年度の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、工学系「ものづくり」教育活動を地域のキャリア教育プログラムの一つとして確立させる点に特色がある。小中高校時代に経験する自らの手を使った工夫、周りと協調したり、競い合ったりするグループ作業、これらの活動は若者の人格形成上不可避なものであり、進路選択に対する指針、目的意識の涵養にもつながる。平成27年度の研究活動では、工学系「ものづくり」教育活動の実態は、活動の提供者の視点のみを重視したもの(地域貢献を標榜したイベント的活動、特定分野への関心・動機付け活動、大学教育としてのPBL活動)であることを明らかにした。また、活動の受け手である地域の教育現場の課題、教育効果に対しては関心が低く、総合学習やキャリア教育につながる活動は存在しないことが明らかになった。 平成28年度は最終年度として、具体的な工学系「ものづくり」教育カリキュラムの開発(モデルテーマ、テキスト・教材開発)と実践を行い、本研究を総括する。具体的には、モデル教材の作製、指導教材テキストの作成、それらを用いた教育実践活動を行う。ここでは、同一概念で小中高校の総合学習、キャリア教育活動から大学での創造教育活動までを網羅できる教材の提案と製作、活動を実践するための教育カリキュラムの提案、地域の小中高等学校の教員、児童・生徒を対象に教育活動を実施する。工学系「ものづくり」教育活動を地域の人材育成教育として発展・整備させることを目標に研究総括活動を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の所要額の内、「旅費」の予算執行に関して余剰が発生した。本研究では全国各地で行われている様々な工学系「ものづくり」教育活動を実地調査するため「旅費」の所要額を多く設定していたが、研究代表者の健康上の理由から対外活動に制限がかけられ(病気(脳梗塞)を発症し医師より再発防止のためストレスが蓄積する活動を控えるよう指導)、当初設定の予算額に余剰が生じた。なお、研究活動は実地調査を中心とするものから、各大学の発信情報(Web情報、活動報告など)を基にする実施状況調査に切り替え、研究の遂行には支障を生じないようにした。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰が生じた「旅費」については、次年度の「消耗品」に算入し、具体的な教育カリキュラムを策定経費(教材とテキスト関連経費)として適正に予算執行を行う。
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