本研究は、「ものづくり」教育活動を地域のキャリア教育プログラムとして確立させることを目的として以下の研究活動を行った。全国の工学系大学が行っている小中高校生を対象とした「ものづくり」教育活動の実態を調査した。活動は地域貢献を標榜した科学マジック講座、特定研究分野のプレ大学講座、大学生のためのPBL講座に分類され、キャリア教育を目的とした講座は存在しないことが明らかになった。また、地域の小中高校生にIT教材を使用した「ものづくり」講座を実施しアンケート調査を行った。講座はロボットをテーマにすることにより、全ての生徒の興味を喚起できること、キャリア教育のみならず教科横断総合学習として位置づけられることを明らかにした。なお汎用教材と指導者用テキストの整備が課題であり、最終年度に下記の研究活動を行った。 1.汎用教材の開発:小中高校生から大学生までが利用できるIT教材をオープンソース資源のみを使って設計、製作した。教材はAVRマイコンを搭載した計測・制御基板で構成され、プログラミングは高級言語とグラフィカル言語にも対応させた。また、樹脂筐体と組み合わせ走行型ロボットに進化できる設計とした。 2.テキストの整備:IT教材の仕様と自作方法,活用法を解説した指導者用テキストを作成した。テキストには授業計画の策定に役立つようIT分野の基礎知識(デジタルの概念、計測・制御の基礎、プログラミング技法)も網羅した。 3.教材の検証:小中学生を対象に製作したIT教材を用いた「ものづくり」教育講座を実施し教材検証を行った。IT教材の利用は小学生にはグラフィカル言語、中学生以上にはグラフィカル言語と高級言語の併用が効果的であることが明らかになった。 本研究で開発したIT教材、テキストは市教育委員会と連携のもと小中学校の理科、技術科教員に配布した。今後は教員研修会等でカリキュラムの普及改善等に努める予定である。
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