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2014 年度 実施状況報告書

「教科の指導法」を指導できる教師教育者の養成・成長:先生の先生はどのように育つか

研究課題

研究課題/領域番号 26590235
研究機関広島大学

研究代表者

草原 和博  広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40294269)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード教師教育 / 教科の指導法 / 教科教育学 / 社会科教育
研究実績の概要

今年度は,3年次計画の初年度として,教科教育学を基盤とした教師教育の担当者=「先生の先生」を育成するプログラム開発のための基礎研究に従事した。その結果,以下3点の成果が得られた。
第1に「先生の先生」を育成する先駆的なプログラムの調査・研究である。国際調査では,シンガポール,オーストラリア,シンガポールで活躍する教師教育者を訪ね,教師教育者に求められる資質・能力とそれを習得するまでのプロセスについて聞き取り調査を行った。国内調査では,文献等を手がかりにして北海道大学や東京大学,筑波大学,京都大学等で確立されている大学教員の育成プログラムを分析し,その理念や方法の分類,整理を試みた。調査の結果,日本国内では教師教育者の育成に特化した教育プログラムが未成熟なことが明らかとなった。
第2に「先生の先生」を育成するプログラムの(試行的な)開発研究である。大学院生を教師教育者に育成するための5段階の目標論とそれを可能にするアサイメントを体系化し,それに基づいて大学院生を「社会科の指導法」のTAに従事させた。調査の結果,修士課程と博士課程の院生では問題意識に違いはあれども,意図的に設定された課題に従事させることで,①授業づくりの目的や方法を説明したり,②自ら授業を実演したり,③他者の授業の批評・代案提示できるなど教師教育者としての資質・能力の向上が期待できることが明らかとなった。
第3に「先生の先生」の自己成長を支援する教材の開発研究である。教員養成のあり方や教員研修のあり方を考えるヒントとなる「ハンドブック」を開発し,その有効性を検証した。調査の結果,教師教育者は①研究者として,②研修計画者として,③実践支援者として,それぞれの教師教育観にもとづいてハンドブックを評価・活用しようとすること,またハンドブックは養成・研修のねらいや方法を省察する機会を与える点でも有益なことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画どおりの研究が実施できた。
とくに今年度は,教科教育学を基盤とした教師教育の担当者=「先生の先生」を育成するプログラム開発に向けて,基礎的なデータを収集することができた。とくに以下3点を理由にして,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
第1に教員養成課程の「教科の指導法」に大学院生をTAとして参画させることの効果を,論文として多数発表できたことである。TA自身に自らの教授行為とそのインパクトを調査,分析させることで,①教師教育者としての指導上の留意点や②研究者としての問題意識や責任感を意識させることができた。教師教育者の育成プログラムに組み込む視点・方法についての見通しが得られた。
第2に教師教育者研究の人的ネットワークを拡張できたことである。今年度の欧米調査を通してオランダを中心としたATEE(Association for Teacher Education in Europe)のメンバーと交流を持つことができた。次年度以降はこのネットワークを基盤にして,当該地域における多様な目的を志向した教師教育者育成プログラムを実地に調査・観察できる見通しが得られた。
第3に"Self-Study"という研究方法論の意義を発見できたことである。一連の調査の結果,海外の教師教育者がSelf-Studyに従事し,その成果をジャーナルに発表していること,またその方法論を通して教師教育者としての活動を自己分析することが,教師教育者の専門職性の向上(Professional Development)に有効と認知されていることが明らかとなった。方法論の共有を通じて,研究成果を国際的に発信・交流できる見通した得られた。

今後の研究の推進方策

本研究を遂行する上で,特段の課題はない。
あえて指摘するならば,教科教育学を基盤とした教師教育の担当者=「先生の先生」の「成長過程」の分析が計画どおり進むかどうかである。
次年度は,①大学院生,②現職教員ならびに③外国人留学生から社会科の教師教育者にキャリア移行した人物への観察・聞き取り調査を予定している。調査対象の候補者から研究協力が得られるかどうか,また調査を通して有効なデータが収集できるかどうかが,研究の進捗を左右するだろう。
連携協力者とは,あらためて調査の視点や質問事項を入念に調整したい。調査対象候補者向けには,研究の目的や本年度の成果をコンパクトにまとめた資料等を作成し,協力が得られる環境を整備したい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 社会科教師はどのようなカリキュラムデザインが可能か(2)-公民学習材の開発と活用の事例研究-2015

    • 著者名/発表者名
      草原和博・岡田了祐・渡邉巧・大坂遊・能見一修・横山千夏・若原崇史・寺嶋崇
    • 雑誌名

      学校教育実践学研究

      巻: 21 ページ: 83-96

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 教師のリーダーシップと教科指導力の育成プログラム-シンガポール国立教育学院のGPLに注目して-2015

    • 著者名/発表者名
      棚橋健治・渡邉巧・大坂遊・岩田昌太郎・草原和博
    • 雑誌名

      学校教育実践学研究

      巻: 21 ページ: 133-142

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 社会科教育に関する内面化された規範・観念の脱構築-移行・接続教育としての初年次教育の意義-2015

    • 著者名/発表者名
      大坂游・草原和博
    • 雑誌名

      社会認識教育学研究

      巻: 30 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 社会科教師志望学生の授業プランニング能力はいかにして学習されるのか-大学入学後の能力向上の要因と支援策-2015

    • 著者名/発表者名
      大坂游・渡邉巧・金鍾成・草原和博
    • 雑誌名

      学習システム研究

      巻: 2 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 現代社会の課題に応える教科教育プログラムの開発研究-Curriculum Research & Development Centerの取組の試行として-2015

    • 著者名/発表者名
      棚橋健治・草原和博・三好美織・影山和也・間瀬茂夫・松宮奈賀子・木下博義・兼重昇・岩田昌太郎・吉田成章・森田愛子・大杉昭英
    • 雑誌名

      広島大学大学院教育学研究科共同研究プロジェクト報告書

      巻: 13 ページ: 印刷中

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 教員志望学生にみる社会科カリキュラム分析力の向上とその効果-社会系(地理歴史)カリキュラムデザイン論の受講生を手がかりに-2014

    • 著者名/発表者名
      岡田了祐・草原和博
    • 雑誌名

      広島大学大学院教育学研究科紀要』第二部(文化教育開発関連領域)

      巻: 63 ページ: .49-58

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 社会科授業改善ハンドブックの開発と活用-教師の課題分析と課題解決を支援するために-2015

    • 著者名/発表者名
      草原和博・岡田了祐・大坂游・渡邉巧・岩下真也・上嶋智江・小川征児・木坂祥希・魏思遙・佐々木拓也・辻本成貴・寺嶋崇・山田健司・杠拓哉
    • 学会等名
      社会系教科教育学会 第26回研究発表大会
    • 発表場所
      兵庫教育大学,日本
    • 年月日
      2015-02-21 – 2015-02-22
  • [学会発表] ecoming a Teacher Educator of Geography-History Education through Teaching and Researching Pre-service Teachers2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro KUSAHARA, Takumi WATANABE, Yu OSAKA and Jongsung KIM
    • 学会等名
      Joint Symposium with Hiroshima University. and Soul Natinal University
    • 発表場所
      Hiroshima, Japan
    • 年月日
      2015-01-29 – 2015-01-29
    • 招待講演
  • [学会発表] How and when can pre-service teachers develop their lesson planning skills in Social Studies?2014

    • 著者名/発表者名
      Yu Osaka, Takumi Watanabe, Jongsung Kim and Kazuhiro Kusahara
    • 学会等名
      The 9th East Asia International Symposium on Teacher Education
    • 発表場所
      Yuseong, South Korea
    • 年月日
      2014-11-04 – 2014-11-05
  • [図書] コモン・グッドのための歴史教育-社会文化的アプローチ-2015

    • 著者名/発表者名
      渡部竜也・草原和博・田口紘子・田中伸
    • 総ページ数
      496
    • 出版者
      春風社

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公開日: 2016-05-27  

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