1年の延長研究が認められ、計画通り、昨年度末の実地調査で収集した調査資料を整理し、まとめることができた。 独バーデン・ヴュルテンベルク州において新しくスタートした州政府の教育課程の基準である2016年版レアプランと2004年版レアプランとの詳細な比較を行い、資質・能力ベースの教育課程の特色を明確にすることができた。また、実地調査したギムナジウムやレアルシューレの歴史授業について、その内容を整理することができた。それらの概要については昨年度すでに報告しているので、ここでは、次の諸点を新たな研究成果として報告する。 ①資質・能力ベースの教育課程の編成原理に基づいた授業が確実に各学校現場で行われるように、アビトゥア・教員養成・教員採用と一体となって教育改革が行われている状況が確認できたこと、②生徒が探究する歴史授業を開発するために、レアプラン作成に関与した大学教授・歴史科の教員らを指導者として、グループワークを中心とした研修講座が企画されており、教育現場で指導的立場にある教科指導教諭に新レアプランの原理を確実に伝達する体制を作ることに伝達初年度の目標が定められていることなどが確認できたことである。 ①については、州の教育局が中心となり、養成機関・研修機関などと連携をとりながら行っているため、全体を見通した一貫した教育政策の実現が可能となっていることが大きく作用している。②については、レアプラン作成に関与した有識者が直接、教育現場で指導的立場にある教科指導教諭に、その構成原理を伝達していることが重要である。このような体制はこれまではとってこなかったようである。2016年版レアプランは、従来のレアプランと大きく内容が変わっており、教育内容だけでなく方法的な側面においても記述が増大してしているため、現場の混乱を避けるための手立てを講じることが必要であるとの判断からのことである。
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