研究課題/領域番号 |
26590248
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 真理 九州大学, 基幹教育院, 教授 (70274412)
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研究分担者 |
滝吉 美知香 岩手大学, 教育学部, 准教授 (00581357) [辞退]
鈴木 大輔 東北大学, 学内共同利用施設等, その他 (70455814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達障害 / 気まずさ理解 / 社会的失言 |
研究実績の概要 |
本研究では、発達障害児者の「空気のよめなさ」が対人関係上の「気まずさ」を生じたときの失敗感に対して、「支援的ユーモア」によってそれらの失敗感から回復する力へとどのように転換できるかの「レジリエンス」について実証的臨床的に検討することを目的としている。27年度においては、発達障害児において、どのような「空気をよまない」言動を表出するのか、またどのような事象に対して「気まずさ」を感じるのか、その特性に関する基礎的研究(発達的検討・障害の有無による違いの検討)を遂行し、この観点からの対人関係上の特性を解明することに焦点をあてて検討をすすめた。12カテゴリー(A字義通り、B雰囲気を乱す、C失言・意地悪、D不都合、E道徳、F想定外の言動、G他者の存在、Hネガティブ感情、I関係性、J感情のズレ、K性・恋愛、L図々しい)について、生活年齢と発達障害の有無との関連について調査研究を行った結果、定型発達者の回答はこれら12カテゴリーでみられることが示された。その一方、発達障害者においては、このうち9カテゴリーにおいては定型発達と同様に示されたが,「A 字義通り」「J 感情のズレ」「L 図々しい」に該当する回答はみられないことが明確となった。これらのカテゴリーではASD者自身が気まずい場面として認識しにくいことを示しており,定型発達者とは異なる特徴といえる。発達障害児者の「空気のよめなさ」は心の理論(Theory of Mind)研究の流れのなかで、失言(Faux Pas)に関する検討にとどまっている(Baron-Cohen ;1999,Zalla ら;2009)。しかし、これらの研究結果から「空気のよめなさから気まずさを生じる」言動について幅広く把握し基礎的体系的検討を行うための観点を提供することが可能となったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ分析、論文投稿ともに予定通りすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究で得られた知見をもとに、①各カテゴリーごとに気まずさ場面を呈示する課題を作成し、どこをどのように注目して、気まずさの有無を判断したのか検討する、②心理教育臨床場面に活用し、「空気のよめなさ」が対人関係上の「気まずさ」を生じたときの失敗感に対するレジリエンスにおいて、支援的ユーモアがどのような有効性を与えるかを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状況 どのような事象に対して「気まずさ」を感じるのか、その特性に関する基礎的研究(発達的検討・障害の有無による違いの検討)を遂行し、この観点からの対人関係上の特性を解明することに焦点をあてて検討をすすめた結果、12カテゴリー(A字義通り、B雰囲気を乱す、C失言・意地悪、D不都合、E道徳、F想定外の言動、G他者の存在、Hネガティブ感情、I関係性、J感情のズレ、K性・恋愛、L図々しい)を得たが、各カテゴリーごとの生活年齢と発達障害の有無との関連について、再分析を行った。再分析にあたり、再度ローデータのスコアリングを見直す等の作業を行ったため、課題の選定に時間を要し、計画通り進まなかった。(分担者のうち1名が育休期間となり、分担者の変更があった)
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画
①気まずさ理解に関する発達差の検討:各カテゴリーごとに気まずさ場面を呈示する課題を作成し、どこをどのように注目して(視線分析を用いる)、気まずさの有無を判断したのか検討する。②気まずさ理解失敗時の支援的ユーモアの有効性に関する臨床的検討:心理教育臨床場面において、「空気のよめなさ」が対人関係上の「気まずさ」を生じたときの失敗感に対するレジリエンスにおいて、支援的ユーモアがどのような有効性を与えるかを解明する。
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