研究課題/領域番号 |
26590250
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
東條 吉邦 茨城大学, 教育学部, 教授 (00132720)
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研究分担者 |
長谷川 壽一 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30172894)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉症 / 実際場面 / 社会的困難性 / 視線 / アイトラッカー |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)は社会的な関係性における困難を主徴とする発達障害である。その困難の認知神経学的基盤を探るため、これまでに多くの研究が実施され、ASD児者の社会的・対人的な刺激に対する反応について検討が行われてきたが、実のところ、それらの結果は一貫していない。その原因として、従来の研究では、コンピュータ画面上に他者の表情等の画像によって社会的な刺激を呈示していたため、リアリティーに欠けていた可能性が考えられる。そこで本研究では、実際場面におけるASD児者の他者への反応(特に注視行動)について、心拍や脳波測定による生理学的指標も併用し、アイトラッカー(視線追跡装置)等を用いて詳細に検討し、教育や療育への臨床的応用を目指す取り組みを行った。平成26年度は、以下の3点を中心に検討した。 1)実際の人物(成人)と対面した際の、自然な状況下でのASDの児童生徒14名と定型発達の児童生徒14名のアイコンタクトへの反応を計測した。その結果、ASDでも定型発達でも実際の人物によるアイコンタクトによって大きく心拍数が減少したが、両群間には有意な差は認められなかった。この結果は平成27年3月に学会発表した。この結果と、画面上の人物を見た際の反応との差異の検討を開始した。 2)アイトラッカー(Tobii TX300)を用い、実際場面での他者2人との会話中の注視データを記録し、結果の一部を分析した。その結果、自閉症指数(AQ)の高い成人群(8名)は定型成人群(8名)と比較して、三者対話場面において他者2人への視線配分には偏りが認められ、注視行動が不適切である可能性が示唆された。 3)ASDの青年と定型発達の青年のボディーイメージ及びパーソナルスペースに関するデータを記録し、それらの分析を行い、結果の一部を平成27年3月に学会発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本報告書の「研究実績の概要」欄の2)に記載した成人群を対象とした研究では、当初、実験装置(Tobii TX-300)の動作が不安定だったために、約1カ月半ほど実験の開始が遅延したため、得られたデータの分析に、やや遅れがあるものの、研究全体の進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
全体的な研究の推進状況には、特に大きな問題はないと考えるが、データ分析の進捗状況がやや遅れているので、その促進に心掛けたい。また、対象児者の人数も増やすことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本報告書の「研究実績の概要」の欄に記載した、1)と3)の研究において、当初、予定していた対象児者の人数より、実際の対象児者の人数がやや少なかったことが、人件費・謝金の費目において、次年度使用額が生じた一つの理由である。また、2)の成人を対象とした研究において、使用した装置(Tobii TX-300)の動作が不安定だったために、約1カ月半ほど実験の開始が遅延し、そのためにデータの分析が遅れていることも、人件費・謝金の費目において、次年度使用額が生じた一つの理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しをした人件費・謝金を使用して、平成26年度に得られたデータの統計的分析を平成27年4月から実施している。
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