最終年度に実施したのは、メッセージをより詳述した長いことばを用いて送り出すことにより、会話の崩壊が回避されるという仮説の検証のための会話分析と介入である。15週連続で行った、7歳の高機能自閉症スペクトラム児と大学院生の会話セッションのうち、第6セッションで会話分析を行い、第7セッションで介入を行った。ターゲットはセッションの終了の交渉である。4ターンにまたがって行われた大学院生の示唆的な終了への勧誘(例 「そろそろ終わりにしませんか?片づけようか?」)に対して子どもは一貫して無反応であった。介入では「お母さんに時計の長い針が4か5に来たら終わりますといいました。だからもう終わりたいのですけど、いつ終わりたいですか?」という長いことばが用いられ、子どもは「もう終わりにしたい」と応じた。 研究期間全体では、5事例について会話分析と介入が行われた。大人の話している最中に無関係な行動を始めるケースでは大げさな身振りで改善がもたらされ、前置きなしで話す子どもに大人が直截な質問をすることで会話の継続につながった。大人の終助詞付きコメントに子どもが反応しないケースでは終止形をもちいてコメントするようにし、子どもの反応が得られるようになった。5名の子どもと大人の会話記録のうち中央の10分間を抜き出し、文字転写資料を作成し、ケースごとに用意した伝達行動のコーディングシステムを用いて研究目的を知らない大学院生にコード化を求めた。大人を聞き手として特定しない話し方のケースでは、ベースラインが3/36から32/134(聞き手を特定した話しかけ/子どもの話しかけ総数)、トリートメントで2/68から90/117、ウィズドローアルでは2/52から31/131であった。トリートメント期に最高値を記録したが、ベースラインからトリートメントへの上昇は確認されなかった。
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