研究課題/領域番号 |
26590257
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
鳥越 隆士 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10183881)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 聴覚障害児 / 算数 / 手話 |
研究実績の概要 |
本研究は,聴覚障害児童が抱える算数学習の困難さの複層的要因を解明し,査定と支援に関して実践的な手がかりを得ることを目的とする。本年度は,まずこれまでの研究,実践的な記録を広範囲にレビューした。具体的には,定型発達児の算数概念の発達過程,聴覚障害児の算数の学習成績の実態,聴覚特別支援学校等での算数学習のつまずきと指導の工夫に関する実践,算数障害に関する最新の研究や実践等である。聴覚障害児の算数の困難さについては,一部では発達障害に関連するものも含まれること,また日本語の学習に関わる要因,同時に複数の事項を操作することの困難さなど認知的特性に関わる要因,計数など算数に関わる経験が幼少期に乏しいことの要因などの可能性があることが明らかになった。これらの結果をもとに,1つには算数学習場面での参与観察によるいくつかの記録を予備的に再分析し,「算数ことば」の表現や理解の困難さを示すエピソードが得た。ここに手話の役割の可能性が示唆された。また,これまでに実施したK-ABCの検査結果を再分析した。算数の標準得点に及ぼしている認知処理過程尺度の下位検査の影響を,重回帰分析により検討した。その結果,「手の動作」「数唱」「語の配列」の継次処理に関連する下位検査と「模様の構成」の同時処理に関連する下位検査の2つのグループが関連することが明らかになった。前者はことばの学習に関連性が高いことがわかっており,以上の結果から,ことば,特に日本語の獲得(特に算数ことば)に関係する要因と情報の統合に関係する要因の2つの要因が,算数学習の困難さを構成している可能性があると指摘された。今後,下位尺度の個々の項目についてもさらに検討を広げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聴覚障害児の算数学習の困難さを構成する複層的要因を2つにより分ける可能性を得て,今後の実践的な方途を考える手がかりを得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
算数学習の困難さの査定に関しては,K-ABCの下位検査の詳細な分析を進める。また支援に関しては,査定の検証結果と関連付けながら,聴覚障害児の算数の学習場面の観察と分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助の謝金業務が年度末になり,執行が来年度となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
特に変更はない。
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