本研究は,聴覚障害児童が抱える算数学習の困難さの複層的要因を解明し,指導・支援に関して実践的手がかりを得ることを目的とした。まず,K-ABC検査結果の再分析を行った。重回帰分析により「算数」の標準得点に「手の動作」「数唱」「語の配列」(以上,継次処理尺度)と「模様の構成」(同時処理尺度)の2つのグループが関連することが明らかになった。手話の活用を検討するため,聴覚障害幼児とろうの母親による数や量に関わるプレニューメラシ―活動を分析した。母親は身振りや指さしに手話の数詞を抱合させて提示するなど行為が見られた。児は1歳後半に数詞を表出し,2歳半頃に計数行為が母親の支援のもとに出現した。
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