研究課題/領域番号 |
26590258
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
戸部 郁代 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20192908)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達障害 / 臨床看護師 / 就労 / 職業適性 |
研究実績の概要 |
発達障害の人の臨床現場における看護師としての職務状況の把握及び看護学生に対する修学状況及び支援の現状を把握することで問題点の抽出や検討課題を明確化し、今後の修学・就労支援の在り方を検討する目的で全国の大学病院及び400床以上の総合病院の合計555施設の看護部長を対象として実態調査を行った。その結果以下の点について明らかになった。 回答が得られた201施設のうち、約3/4の施設に発達障害(疑い含む)の看護師が在職していた。これらの看護師は、多くの施設において「何度同じことを指摘しても一向に改善されない」、「急な予定変更や突発的な事態に対して臨機応変に対応できない」等、職務遂行上で何らかの支障をきたしており、それに対して上司や同僚は「職務の量や内容をその人に応じて調整する」等の配慮を実施していた。このような背景を踏まえてか、発達障害の人の看護職員としての採用について8割の施設は「採用しないだろう」と回答し、その理由で多かったものとして「看護師としての職務遂行に問題がある」、「患者の安全が保証されない」があった。また、看護学生についても約半数の施設で発達障害の看護学生の臨地実習を担当しており、障害特性がもたらす問題点が各種露呈しているとともにこれらに対して臨床指導者と看護教員が協同して配慮しながら実習を展開させていた。 発達障害の人が看護師として就労するにあたっての資質については、全体の約9割が「問題がある」と回答し、具体的には突発的な事態への対処や他の人との円滑な意思疎通といった看護師としての基本的な職務行動を問題視していた。しかしながら、いくつかの施設では障害特性を理解した上での就労に前向きな意見もあり、それを実現するためには臨床側と教育側が当該者について適切な情報共有を行いながら看護師育成に携わる必要があり、積極的な対話と連携を必要とすることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に計画していた調査の実施や分析が終了し、臨床現場で発達障害の看護師が職務を遂行することや看護学生が臨地実習を展開していく上の問題点やそれに対する支援の実態を把握することができ、就労支援についての方策についても考案することができた。調査の実施にあたり準備に時間を要してしまい、当初予定していた時期より遅くなってしまった点や前年度実施した調査に関する成果発表が遅延している状態にあるため研究自体の進捗が全体的に遅れ気味となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の看護教育現場および平成27年度の臨床現場において発達障害の人が看護師になるための教育や看護師になってからの職務上における様々な問題点が明らかになった。そこで平成28年度は、これらの調査結果の中で共通の問題点となっていた看護職への志望を進路先として決定する指導にあたった高校を対象とする調査を計画通り実施する予定である。また、特に研究の最終年度でもあるため発達障害の人が看護職を希望した場合、高校・大学・就職先(主に病院)がそれぞれにどのような連携を構築すれば発達障害の人および関わる全ての周囲の人にとってよりよい結果を導けるのかを具体的に考案していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象の病院施設数について、大学生が就職を希望する傾向が高いとされる病床数の多い病院に限定したため当初計画していた対象の約6割程度に留まってしまい、その他の項目である郵送費がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に調査を実施する対象に計画している全国の高等学校(普通科)に対して調査用紙の配布・回収を目的とする郵送費として使用する。
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