研究課題
本研究の目的は,電場で誘起される局在スピンの検出に向けて,走査ゲート顕微法(SGM)と磁気力顕微法(MFM)を両立させた『走査電気磁気効果複合顕微法(SEMEM)』の開発に挑戦することにある。原子間力顕微鏡(AFM)の導電性探針からの局所電場変調による試料の伝導度変化(SGM)を進化させ,走査ゲートスペクトロスコピー(SGS)に拡張する。さらに探針に強磁性コート探針を用いることで局在スピンモーメントの検出応答(MFM)を同時にマッピングし,スピン局在現象の観察に適用する。これにより,半導体量子ポイントコンタクトで観測される非整数段現象(0.7構造)や近藤効果,局在スピン共鳴現象といった,未解明なスピン局在現象の解明へとつなげることをめざした。本年度は昨年度に引き続き,チューニングフォーク型のAFMの整備を行い,大気中のみならず真空中での動作の確認に至った。SGM観察に関しては,大気中でのMoS2-FETの観察を進め,チャネル内に連続的なSGM応答を観測し,そこでは大きな電圧降下が生じていることを見いだした。対照実験により,電子線照射によってバンドギャップが変化している可能性を示唆する結果が得られ,MoS2における新しい特性変調法として現在研究を進めている。また,グラフェン量子ドットに関してMFMとEFMの同時観察を進め,通常のEFMとは異なる応答が観察されてきているが,MFMとEFMの応答を分離することが難しく,これらの現象の解釈には更なる研究が必要である。
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