研究課題
近年、原子間力顕微鏡(AFM)の発展は目覚しい。AFMは、鋭い探針を試料表面でスキャンさせ、探針にかかる微弱な力を測定することによって、表面の原子を観察する顕微鏡である。AFMを用いると、探針先端の1つの原子と表面の1つの原子との間の1対1の化学結合力を精密に測定できる。これまで、これを応用して、半導体表面で化学結合力測定に基づく元素同定法を提案し、実証してきた。様々な原子に適用できる元素同定法の開発は、現在も進行中であるが、これをさらに一歩進めた技術に、同位体の識別がある。当該年度は、モデルサンプルとなる有機分子と、金属酸化物の高分解能観察を行った。まず、光干渉計を用いた高感度なAFMによって、有機分子の観察を室温で行った。その結果、極低温の研究と同様に分子内の結合手を解像する画像が室温でも得られた。これにより室温環境下においても、高分解能観察が可能であることが初めて示された。探針先端の活性度とは無関係に不活性な分子を斥力イメージングできることが示された。さらに、AFMの画像と相互作用力のカーブを理論計算と比較したところ、よい一致を得ることができた。一方、識別の研究を行うプラットフォームとなる、金属酸化物の研究を行った。異なる結晶方位の二酸化チタン表面をAFMによって、原子分解能で調べ、吸着物や表面下の欠陥に関する知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
本研究のモデル系となる、有機分子と金属酸化物について、AFMを用いた高分解能な解析を行うことができた。また、水平力を測定する装置を設計し、組み立てた。
組み立てた水平力顕微鏡を用いて、原子分解能で表面を観察し、相互作用力と散逸量を測定する。垂直力と水平力を区別して測定するために、カンチレバーと表面の角度に注意を払う必要がある。
代表者が、大阪大学から東京大学へ異動することになったため。
代表者が、大阪大学から東京大学へ異動した結果、装置の調整にクレーンが必要になったので、その目的のために使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 9件) 学会発表 (40件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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