研究課題/領域番号 |
26600020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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研究分担者 |
干川 康人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90527839)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゼオライト / ナノカーボン / 鋳型法 / グラフェン / エッジ面 |
研究実績の概要 |
ゼオライトを鋳型とし、エッジ面の無い閉じたグラフェン曲面からなる3次元炭素を合成するため、ゼオライト細孔内部へ充填する炭素の量の増加を検討した。基本的な合成スキームとしては、ゼオライトの空洞に炭素原子を詰め込み、その後にゼオライトを弗酸で溶解させて炭素を取り出す。本研究ではゼオライトの炭素充填量を従来よりも大幅に増加させるために、粒径が約50 nmのゼオライトナノ結晶を鋳型に用いることを試みた。従来の合成法では粒径約200 nmのゼオライトを用いていたが、化学気相蒸着(CVD)による炭素充填の際、炭素が析出して狭くなった細孔へさらに大量の炭素を充填するには、かなりの長時間を要する。そこで、鋳型となるゼオライトの粒径をなるべく小さくしてCVDの際の炭素源ガスの拡散距離を短くする。そのため、本年度はゼオライトナノ結晶の調製法の確立を目指した。超純水にAlとSiの有機アルコキシドと構造規定剤を混ぜ、水熱反応でY型ゼオライトの合成を行った。当初は目的とするY型ゼオライト以外の種類のゼオライトも副生したが、混合物の割合、水熱条件を最適化することで、粒径が25-60 nmのY型ゼオライト粒子を合成することができた。次年度はこの合成したゼオライトを用いてCVD法によりできるだけ大量の炭素をゼオライトの空洞に充填する。それとともに通常サイズのY型ゼオライト粒子を用いて、パルスCVD法で炭素堆積量の最大化を試み、パルスCVD条件の最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた炭素堆積のためのパルスCVD の条件(温度、時間、アセチレン濃度など)の最適化を行うことができた。さらに本年度の最大の目標であったY型ゼオライトのナノ粒子を合成できたことは大きな進歩であった。しかし、Y型ゼオライトのナノ粒子合成のための合成条件の最適化に手間取り、次の目標であったcold wall 型のCVD装置を作ることができなったので、上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で合成したY型ゼオライトのナノ粒子を鋳型とすることで炭素合成を行う。炭素の堆積はまず通常のhot wall型のCVD装置を用いて行い、CVD条件の最適化を徹底的に行う。また、炭素を充填することで調製した炭素/ゼオライト複合体は熱重量分析により炭素充填量を確認する。さらに、ゼオライトを溶解除去して炭素を取り出し、熱重量分析によりゼオライト細孔内部で生成した炭素とゼオライト外部で生成した炭素を定量する。さらに、元素分析、固体NMR、ラマン分光、透過型電子顕微鏡観察、ガス吸着等の手法を用い、得られた炭素の構造解析を行う。研究の効率を上げるために上記の推進方策をまず優先し、cold wall 型のCVD装置の立ち上げはその後にする。
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