ゼオライトを鋳型とし、エッジ面の無い閉じたグラフェン曲面からなる3次元炭素を合成するため、ゼオライト細孔内部へ充填する炭素の量の増加を検討した。基本的な合成スキームとしては、ゼオライトの空洞に炭素原子を詰め込み、その後にゼオライトをフッ酸で溶解させて炭素を取り出す。本研究ではゼオライトの炭素充填量を従来よりも大幅に増加させるために、粒径が約50 nmのゼオライトナノ結晶を鋳型に用いることを試みた。従来の合成法では粒径約200 nmのゼオライトを用いていたが、化学気相蒸着(CVD)による炭素充填の際、炭素が析出して狭くなった細孔へさらに大量の炭素を充填するには、かなりの長時間を要する。そこで、鋳型となるゼオライトの粒径をなるべく小さくしてCVDの際の炭素源ガスの拡散距離を短くする。そのため、昨年度はゼオライトナノ結晶の調製法の確立を目指した。超純水にAlとSiの有機アルコキシドと構造規定剤を混ぜ、水熱反応でY型ゼオライトの合成を行った。当初は目的とするY型ゼオライト以外の種類のゼオライトも副生したが、混合物の割合、水熱条件を最適化することで、粒径が25-60 nmのY型ゼオライト粒子を合成することができた。今年度はこの合成したゼオライトを用いてCVD法によりできるだけ大量の炭素をゼオライトの空洞に充填する試みを行った。その結果、通常サイズのY型ゼオライト粒子を用いる場合と比べて大量の炭素が充填できることが明らかとなった。しかし、やはりゼオライト外表面への炭素析出も多く、この分をゼロとすることはできなかった。
|