昨年設計を行ったシンプルでかつ比較的高い効率で結合が行える2種類の金ナノロッドを一直線上に並べた”!”型の構造について、研究を進めた。この構造では、長いロッド中に生じる四重極子表面プラズモンのダークモードを利用することができる。これまで、この種の構造は計算のみが行われてきていたが、実験的な研究は行われてこなかった。これは、ギャップ長のコントロールが難しいためである。本研究では、作製方法を工夫して、実際に構造を作製して実験を行うことができるようになった。 本年度の研究成果として、実際に構造を作製してセンシング実験を行ったことがある。倒立顕微鏡に実装した顕微分光装置を用いて、屈折率変化に対するセンシングを行った。バイオセンシングは、バイオ分子の結合による屈折率をセンシングしているため、同じ原理でセンシングを行うことになる。そのため、バイオセンシング特性の検討には屈折率センシングの結果がその性能を決めるのに良い指標となる。その結果、屈折率分解能は270 nm/RIU、FOM(Figure of Merit)は6.0が得られた。FOMとは屈折率分解能をピークの半値幅で割ったものである。これは、FDTDを用いた計算結果と矛盾しない結果となっている。これまでバイオセンシングに用いられてきた球状のナノ粒子に比べて、1桁高い性能が得られることが、実験および計算から明らかになった。本構造が単純であるにもかかわらず。高いセンシング性能が得らるダークモードを利用した非輻射表面プラズモンセンシング手法の有用性を示すことができた。
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